最新記事

韓国

「元徴用工」の主張に違和感を感じる人たち

2020年8月13日(木)16時30分
佐々木和義

文在寅大統領の姿勢に変化はあるか...... Kim Min-Hee/REUTERS

<2018年10月に韓国の大法院(最高裁)が、日本企業側に賠償を命じたいわゆる徴用工裁判だが、「元徴用工」の主張に反論を述べる人も少なくない...... >

2018年10月、韓国の大法院が日本製鉄に対し、旧朝鮮半島出身労働者1人あたり1億ウォン(約900万円)の支払いを命じたいわゆる徴用工裁判で、日本製鉄が8月7日までに即時抗告を行い、差し押さえが回避された。

19年4月、韓国南東部の全羅南道と光州市の12人が、三菱重工業と住石ホールディングスを相手に慰謝料請求訴訟を提起した裁判でも、三菱重工業は過去4回の公判に欠席したが、7月23日の第5回の公判に代理人が出席した。

被告が出席しない民事訴訟は、原告が勝訴する可能性が高い。三菱重工業に続いて、住石ホールディングスも9月の公判に代理人を出席させる予定である。

大邱地裁浦項支部は今年6月、日本製鉄に対して差し押さえ命令を送達し、日本の外務省に送った海外送達要請書は同省が返送した。送達から2か月が経過すると、掲示や公告などにより伝達されたとみなす規定があり、8月4日に差押え命令の効力が発生、1週間後の8月11日に確定するとみられていたが、即時抗告で命令の効力は停止した。

「元徴用工」の主張に反論を述べる人も少なくない

「元徴用工」とその遺族は、強制的に連行されて十分な給金を受け取ることはなく、また食事や住環境が劣悪で奴隷のような扱いを受けたと主張する。一方、この主張に反論を述べる人も少なくない。

当時、朝鮮半島の農家は貧困を抱えており、現金収入を求めて多くの若者が日本に渡った。なかでも日本の炭鉱や金属鉱山は高額な現金収入を得られる出稼ぎだった。

私がお話を伺った在日3世の崔さんの祖父もその1人だ。崔さんの祖父は軍需工場の募集に自ら志願して、単身日本に渡った。現金収入を手にした崔さんは故郷から兄弟を呼び寄せ、5人兄弟の1人を残して日本に渡ったという。地元では得られない高額な収入が目的だった。崔さんは正規のルートで渡航したが、仕事を求めて密航した人も多く、密航船が沈没して百数十人が命を失う事故もあった。

当時の炭鉱や鉱山は掘り出した石炭や鉱物の量に応じて給与が支払われる歩合制で、強制的に徴用された労働者も働けば働くほど、収入が増えるシステムに馴染んでいった。

日本人より多くの給与を受け取った人もいた。日本人より身体が大きい人や、また戦況が悪化するにつれて若い日本人は戦場に駆り出され、体力的に勝る若者は半島出身労働者が多くなった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

モデルナ、日本でのmRNA工場建設中止 「ビジネス

ビジネス

トランプ氏、パウエルFRB議長非難で理事会も批判 

ワールド

対ロ和平交渉に「さらなる勢い」必要=ゼレンスキー氏

ビジネス

中国、25年レアアース生産枠を公式発表なく各社に通
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 5
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 6
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 10
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中