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中国の太平洋進出の行方を握る小さな島国の選挙

China Could Be in Reach of Hawaii After Monday’s Election in Kiribati

2020年6月22日(月)19時30分
クリストファー・パラ

その一環として、政府は首都タラワと3200キロ東方にあるクリスマス島(および世界の国々)を結ぶ長距離旅客機2機の導入を決めた。報道によれば政府は1機目を6000万ドルで購入し、台湾に対して2機目の購入費用を援助するよう求めたという。台湾のキリバスに対する援助予算が年に1000万ドルであることを考えると無茶な要求だ。蔡英文総統は援助で相手国を釣る「小切手外交」には反対の立場を取っており、台湾はキリバスの要求に難色を示した。台湾の呉釗燮外相は断交を発表した際、「マーマウは商用機を購入するために多額の財政支援を求めてきた」ので台湾は優遇金利での融資を申し出たが、キリバス側から断わられたと語った。

だがベリナはあるインタビューで、台湾はキリバス政府にこれとは異なる提案をしたと聞いたと語っている。融資というのは表向きで、返済期日が来たら台湾は援助額を上積みして返済金額を相殺するという実質的に援助に相当する内容だったという。この話の真偽は不明だ。

台湾からの「政治献金」に懸念

政府関係者によれば、第2の理由は台湾が野党勢力に選挙資金を提供するのではという与党指導部の懸念だ。2003〜2016年にかけて、当時野党だった現与党の人々は、台湾から選挙資金の援助を受けているとして当時の与党(現在の野党)をしばしば批判していた。この「関係」が復活するのではないかと心配しているわけだ。キリバスの法律では、政治献金の出所に関する規制がない。

3番目の理由は、台湾寄りの野党によると、中国から賄賂をもらって気がついたら中国に支配されていたという数々の小国と同じパターンだ。南太平洋のソロモン諸島もそうだ。ソロモン諸島はキリバスの4日前に中国と国交を回復した。ソロモン諸島マライタ州のダニエル・スイダニ州長がオーストラリのテレビ取材班に語ったところによると、中国との国交回復を支持するなら100万ドルをくれると言われ、断ったという。だが、政府内には、賄賂を喜んで受け取った腐敗した政治家が多くいたと思うと語った。

太平洋における中国の勢力拡大を取材するため南太平洋に来ていたオーストラリアの取材班は、キリバスのタラワに着いたばかりの時、ホテルで軟禁された。撮影許可を得ていなかったからだと当局は説明したという。だが、取材班が次の飛行機で国外追放される前、キリバスの初代大統領で現在は野党議員のイエレミア・タバイと、野党指導者タバネがホテルを訪ねてきた。二人は取材班の追放を「民主主義にとっての悲劇」と呼び、中国が賄賂で国交回復の支持者を増やしていると語ったという。

<参考記事>台湾が太平洋の諸島国キリバスと断交 外交関係残る国はわずか15カ国に
<参考記事>南洋の小国ツバル、中国に反旗 中華企業の人工島建設を拒絶、親台湾姿勢を堅持

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