最新記事

中印関係

中印衝突で燃えるインドの反中世論

Indians Burn China Flag, Demand Trade Boycott As Protests Erupt Over Clash

2020年6月19日(金)17時30分
ダニエル・ビャレアル

西部の都市アフマダーバードの反中集会で習近平の写真を燃やす人たち Amit Dave-REUTERS

<積年の恨みも手伝って、習近平の肖像を燃やし、中国製品のボイコットを呼びかけるインド人>

長年に渡って中国とインドの国境対立が続いているインド北部の山岳地帯ラダック地方で、今月15日と16日に両軍が衝突して兵士20人が死亡したとインド軍が発表した。これを受けてインドでは反中感情が高まっている。

インド兵が殺害されたことに抗議して、インド各地の都市では抗議集会が開かれ、中国の国旗や中国製品、習近平(シー・チンピン)国家主席の肖像が燃やされた。人々は、中国への報復と、中国との貿易の停止を求めている。

インドのテレビ局NDTVによると、インド軍を退役した元少佐で現在はニューデリー南部の住民福祉協会の会長を務めるランジート・シングが制作した、中国に対して「協会が宣戦布告する」5分の動画がインド国内のネットで拡散されている。この動画でシングは、全てのインド国民に対して中国製品のボイコットを呼び掛けている。

「インド軍の非武装の将校や兵士が中国軍に残酷に殺害された。これはまったくの裏切りで、ただの殺戮だ」と、シングは語っている。「残念ながら我々は銃を取ることはできないが、経済的に中国の背骨を折ることはできる」

中国政府系の英字紙「Global Times」は17日付けの社説で「反中グループがインド世論を攪乱し、緊張が高まるのをインドが許すなら、それは極めて危険だ」と主張している。

衝突は石やこん棒で「殴り合い」?

インド北部ラダック地方の3500キロに及ぶ国境をめぐって、インドと中国はこれまで約80年間、対立を続けてきた。しかし今月の衝突は1967年以降で最も多い死亡者を出している。インドのニュース媒体、アジアンニュース・インターナショナルは、今回の衝突で中国兵43人が死亡したと報じている。

インド軍は今回の衝突について「発砲はなかった」と主張している。戦闘には石やこん棒が使われ、兵士は殴り殺されたという報道もある。

何をきっかけに衝突が始まったかは不明だが、両国の政府が相手を非難している。中国とインドは、それぞれ世界第1位、2位の人口を抱える大国で、核兵器も保有していることから、長期の紛争に発展することへの懸念が生じている。

<参考記事>インド、日本の新幹線を採用――中国の反応と今後の日中バランス
<参考記事>中国請負の高速鉄道建設が工期遅延に予算超過 インドネシア、入札に敗れた日本の参加要望

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で

ビジネス

NY外為市場=円急伸、財務相が介入示唆 NY連銀総

ワールド

トランプ氏、マムダニ次期NY市長と初会談 「多くの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中