最新記事
情報セキュリティー

テレワークで利用者急増のZoom、安全性には問題だらけ

Is Zoom Safe ?

2020年4月8日(水)14時30分
ジェーソン・マードック

ズームを使ったオンライン授業を自宅で受けるスペインの学生 ALBERT GEA-REUTERS

<テレワークやオンライン授業のため利用者が急増中のビデオ会議アプリだが、セキュリティーとプライバシー保護の甘さから炎上中>

新型コロナウイルスの感染拡大によってテレワークやオンライン授業が激増するなか、テレビ会議アプリ「ズーム(Zoom)」の人気が急上昇中だ。しかし専門家からは、セキュリティーやプライバシー保護の問題点が次々に指摘されている。

ズームを提供するズーム・ビデオ・コミュニケーションズ社によれば、昨年12月には1日当たり約1000万人だった利用者が、今年3月には約2億人に急増した。利用者の増加はネットセキュリティー専門家の関心も集め、調査によって安全面の不安要因が次々と浮上している。

米ニューヨーク州のレティシャ・ジェームズ司法長官は3月30日にズームに書簡を送り、高まる需要に対応するには「現在のセキュリティーでは不十分だ」と不満を述べた。

同日、FBIは「ズーム・ボミング(爆撃)」の増加に警告を発した。これはビデオ会議を乗っ取って、「ポルノ画像やヘイト映像、脅迫的な言葉」を見せる行為を指す。

国家安全保障局(NSA)に在籍していたハッカーのパトリック・ウォードルが新たなバグを見つけたとも報じられた。このバグを利用することで、ユーザーのパソコンをハッキングしたり、スパイウエアをインストールすることが可能だという。

情報サイト「インターセプト」は、ズームの安全性に疑問を呈し、ビデオ会議の内容が完全に暗号化されていないことを明らかにした。IT系サイト「マザーボード」は、ユーザーのメールアドレスなどを盗み出せる可能性のあるバグを発見したという。

こうしたニュースが相次いだ末、NASAや宇宙ベンチャーのスペースXは、プライバシー保護に関する懸念からズームの使用を禁止した。

バグの発見に報奨金も

ズームのプライバシーポリシーは、同社が利用者の氏名やメールアドレス、電話番号、請求先住所、メッセージ、ファイル、会議の時刻と場所など多くの情報を収集することを明確にしている。その上で、これらのデータを第三者に販売したり、広告目的で使用しないと明言している。

指摘を受けてズームは、機能追加のアプリ開発を凍結し、「信頼性、安全性、プライバシーの問題」に集中すると発表。バグの発見に報奨金を出す制度の拡充も進めている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中