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新型コロナが収束に向かう中国──前代未聞の経済収縮からの脱却と世界戦略の始動

2020年4月2日(木)11時10分
三尾 幸吉郎(ニッセイ基礎研究所)

しかし、前述のように中国では新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めが掛かっており、経済活動を正常化する取り組みが本格化してきていることから、このままヒトとモノの動きが元に戻れば景気が回復するのも意外に速いだろう。筆者は4-6月期中には経済危機を脱出して、20年通期では前年比2.4%増とプラス成長を維持できると見ている。

但し、足元では気になるデータもある。前ページで示した「輸入症例」と「経過観察中の濃厚接触者」の増加である。欧米諸国では新型コロナウイルスが猛威を振るい始めており、新型コロナウイルスが中国へ"逆流"してくる可能性も排除できない。中国政府は既に水際対策を強化しているものの、もし失敗すれば中国国内で再び市中感染が広がる"第2波"となりかねない。そうなれば、経済活動を正常化するプロセスは頓挫し、20年の成長率をプラスに押し上げる道も閉ざされてしまう。なお、およそ100年前のスペイン風邪の際には、世界的流行の大波が3波も押し寄せることとなった。したがって、"マイナス成長"シナリオが悲観的過ぎるとも言い切れない。

一方、欧米諸国からの"逆流"を水際で阻止することに成功すれば、4月中にも全国人民代表大会(全人代、国会に相当)を開催できる環境が整ってくるため、その全人代で大型景気対策(コロナ版4兆元の景気対策)を打ち出し、"所得倍増計画"を達成する上で必要な前年比5.6%増の経済成長を目指す道がひらかれる。こうして中国経済がV字回復することになれば、リーマンショックで世界経済がどん底に落ちた時に似たような展開となり、中国経済が再び存在感を高めて、世界の勢力図が塗り変わる可能性もあるだろう。欧米先進国が自国の新型コロナ対策で手一杯となっている中で、いち早く新型コロナ禍から抜け出して余裕ができた中国は、イタリア、イラン、イラク、パキスタンなど多くの国に医療物資を提供し、専門スタッフを派遣するなど国際支援を強化して、既に世界で存在感を高めつつあるのだ。

Nissei_Mio.jpg[執筆者]
三尾 幸吉郎(みお こうきちろう)
ニッセイ基礎研究所
経済研究部 上席研究員

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