最新記事

エンターテインメント

韓国版「聖地巡礼」 動物園からカフェ、人気タレントの自宅まで

2020年4月5日(日)11時01分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

newsweek_20200404_224412.jpg

イケメン男子ばかりというカフェを舞台にしたドラマ『コーヒープリンス1号店』 MBCdrama / YouTube

イケメン男子ばかりの人気カフェ

全州動物園は、場所を撮影チームに提供することによって名を広く知られることとなった。そして撮影チーム側は、動物園という特別なロケ地を確保できる。このようなWIN-WINの関係であるが、作品の方がリードする形でロケ地が誕生したドラマもある。

韓国ドラマ『コーヒープリンス1号店』は、2008年にテレビ東京で日本でも放送されていた人気ドラマだ。ドラマの題名にもなっている「コーヒープリンス」というイケメンウェイターばかりのカフェが舞台となっているのだが、このカフェ、実際にソウルの学生街・弘大(ホンデ)に存在する。

これは、元々あったカフェを新装開店しようと考えていたオーナーに、ロケ地を探していた知り合いが、「無料で改装するので、その代わりドラマを撮影させてくれないか」と依頼したそうだ。撮影終了後、オーナーは別の名前で再オープンさせるはずだったが、予想以上にドラマの人気が出たため、TV局側と協議しドラマそのままの名前とコンセプトで営業を続けることとなった。その後、ドラマは世界各国で放送され、舞台となったカフェには様々な国の客が訪れるようになった。

あまりに注目され聖地が荒らされた例も

newsweek_20200404_230417.jpg

済州島のイ・ヒョリとイ・サンスン夫婦の自宅入口。『ヒョリの民宿』が放送されるとこの場所がネットに広まり、ヒョリたちのプライバシーが侵害される状態に 
JTBC Entertainment / YouTube

このような成功例も数多くある一方で、撮影地として有名となりすぎたため、その後うまくいかなくなってしまった失敗例もある。

人気歌手イ・ヒョリとイ・サンスン夫婦が暮らす済州島でのスローライフを紹介するリアリティー番組『ヒョリの民宿』は、JTBCで2017年にパート1、その後続編として2018年にパート2が放送された。さらに現在では、Netflixなどのネット配信もされ世界中で楽しまれている人気番組である。

番組内では、イ・ヒョリ&イ・サンスン夫婦と猫や犬数匹が実際に暮らしている家に、IU、少女時代のユナ、パク・ボゴムといった人気芸能人がアルバイトとして登場。応募者の中から選ばれた一般人数組を、宿泊客として家に迎えるというリアリティショーだ。

韓国にスモールウェディングブームを巻き起こしたイ・ヒョリ&イ・サンスン夫婦の自宅に泊まれるということで話題を呼んだ番組だったが、放送が開始されると、ネット上ではすぐにロケ地であるこの家の住所特定が始まった。

そして、家の場所を示した地図や住所がオンライン上で出回ってしまったため、大型観光バスがすぐ近くまでやってきたり、ドアが叩かれたり、勝手に敷地内に侵入されるなどの被害を受けるようになってしまう。

夫婦はプライバシー侵害を止めるよう訴えたが、その後も収まることはなく、周囲への迷惑なども考えて、済州島を離れることなってしまった。

その後、番組サイドは「今後、第三者が敷地を買い取ったとしても、居住地として活用することは容易ではないと判断した」「コンテンツブランドのイメージ管理と出演者保護のため、イ・ヒョリ、イ・サンスン夫婦との合意のもとで、番組が敷地を買い取った」と発表した。

舞台の場所にリスペクト忘れずに

自分の大好きな作品の舞台となった場所が実際に存在するなら、「その場所に行ってみたい」「できるなら主人公が立っていた同じ場所で記念撮影をしてみたい」と誰しもが思うだろう。その欲求をうまく生かせれば観光に繋がり、新たな作品の撮影隊誘致にもつながる。

実際、韓国で1999年に日本映画『ラブレター』(岩井俊二監督)が公開され大ヒットした後、映画の舞台となった北海道には、韓国からの観光客はもちろん、韓国のドラマ、映画、CMの撮影スタッフが数多く押し寄せるようになった。

だからと言って元々の住民に迷惑をかけていいわけではない。訪問する側も「聖地」と呼ぶぐらいなのだから、リスペクトを忘れないようにしたい。

今は訪れることが出来ない「聖地」だが、いつか新型コロナの危機が去ったときに訪れることができるよう、自身や周囲の人が感染しないように気をつけながら、行ってみたい「聖地」について思いを巡らしておこう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

気象災害警報システム導入を再要請、国連事務総長が温

ワールド

トランプ氏、習氏との貿易合意に期待 ロシア産原油や

ビジネス

英中銀副総裁、銀行レバレッジ規制のさらなる緩和に否

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、米中摩擦懸念が再燃 一時
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 6
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 7
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 6
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中