最新記事

パンデミック

ブラジル大統領ロックダウンを拒否「どうせ誰もがいつかは死ぬ」

Brazil President Bolsonaro Rejects Virus Lockdown: 'We'll All Die One Day'

2020年3月31日(火)19時28分
ベンジャミン・フィアナウ

トランプをも上回る過激さ?のボルソナロ Kevin Lamarque-REUTERS

<感染者が急増中の大国で、科学を信じないリーダーのせいで感染予防が行えない。パンデミックの次の震源地になるか>

ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は、新型コロナウイルスは「ちょっとした風邪」にすぎないと一蹴し、国民に働いて経済を動かし続けるよう呼びかけている。ロックダウン(都市封鎖)にも反対で、自らの支持者に対してその理由をこう言った。「私たちはみな、どうせ死ぬのだ」

アメリカのドナルド・トランプ大統領とよく並べて語られるボルソナロは3月29日、全国規模の隔離を命じるよう求める州知事たちとの何週間にも及ぶ論争を跳ね返し、パンデミック軽視の姿勢をますます鮮明にした。ブラジル保健省の発表では、同国における新型コロナウイルスの感染者数は4661人、関連死者数は165人だ。それでもボルソナロは、3月15日に支持者たちと会った際、握手で挨拶を交わしていた。最近では、他国で行われている外出制限等に触れ、「大量監禁」だと批判した。

「ウイルスは存在する。私たちはそれに立ち向かわなくてはならない。男らしく戦おう。子どものようにふるまうのはやめよう!」。ボルソナロは3月29日、大統領官邸前に集まった支持者に対してそう語ったと、AP通信は伝える。「私たちはみな、いずれは死ぬのだ」

自治体の自主隔離中、支持者らと市場に出てけたボルソナロ(キャプチャ画面)


「ちょっとした風邪」

ボルソナロは3月24日、国民向けにテレビ演説を行い、国内ニュースメディアはウイルス拡散を過度に騒ぎ立て過ぎだと非難した。「派手に恐怖心を煽り、イタリアでどんなに死者が出ているかを大きく報じる。パニックを広げるためにメディアが使う常套手段だ」

ボルソナロのこうした主張は、イースター(4月12日)までに仕事に戻って経済を回そうと言ったトランプの呼びかけとそっくりだ。ボルソナロはテレビ演説で、ウイルスへの感染リスクが高いのは60歳以上なのに、なぜ学校を閉鎖しなければならないのかと疑問を呈した。新型コロナウイルスは「ちょっとした風邪」だとも述べた。

米ワシントン・ポスト紙は3月29日の意見記事で、サンパウロ市内とリオデジャネイロ市内のあちこちで「ボルソナロは辞めろ」という声が聞かれるようになっていると指摘。ブラジルのコンサルタント会社アトラス・ポリティコの報告によると、人口の半分近くがボルソナロの解任を支持している。ブラジルは南米最大の国で、新型コロナウイルスの感染者数と死者数はいずれも、同地域でもっとも多い。

「指導者が道化なら、政治がサーカスになるのも当たり前。死のサーカスだ」(キャプチャ画面)
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB追加利下げは慎重に、金利「中立水準」に近づく

ビジネス

モルガンS、米株に強気予想 26年末のS&P500

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機「ラファール」100機取得へ 

ビジネス

アマゾン、3年ぶり米ドル建て社債発行 120億ドル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中