最新記事

中国

欧州などに医療支援隊を派遣する習近平の狙い:5Gなどとバーター

2020年3月16日(月)13時00分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

新型ウイルス肺炎が世界に拡大 イタリアで感染相次ぐ Flavio Lo Scalzo-REUTERS

10日の習近平武漢入りと合わせて中国から医療支援隊を海外に派遣し「共闘」をアピール。責任追及をかわすだけでなく、なんと、一帯一路や5G協力などへの交換条件を提示している。経済復興段階に入るつもりだ。

中国、海外に医療支援隊を派遣

習近平国家主席が新型コロナ発生以降、初めて武漢入りしたのは3月10日だが、3月9日を含めたそれ以降の中国の動きを見ると、習近平が何をしようとしているか、狙いが見えてくる。

3月11日、中国赤十字会副会長の一人を代表とする医療支援部隊がイタリア行きのチャーター便でイタリアに向かった(イタリアに行くため上海に飛んだ)。医療支援部隊は国家疾病制御センター、四川大学華西医院、四川省疾病制御センターなどの専門家グループや医者看護士医療関係者などから成り立っており、人道救援物資なども運んでいる。

3月12日、中国共産党機関紙傘下の環球網は中国の最初の防疫対外支援専門家チームのチャーター便がイタリアに赴いたと報道した

それによれば、9人の医療専門家と31トンの医療物資(ICU病床設備、医療用防護用品、抗ウイルス薬剤、健康人血漿と新型コロナウイルス感染回復者の血漿など)を携えて上海からローマに直行したという。

四川省は主としてイタリアを支援し、 江蘇省はパキスタンを、上海はイランを、そして広東省はイラクをというように、いくつかの省が一つの国を担当する。

「中国が世界を救うのだ!」という真逆の宣伝

免疫学の最高権威である鍾南山院士(博士の上のアカデミックな呼称)をトップとする専門家チームを擁する国家衛生健康委員会の提唱により、中国では2月7日から「一省包一市」という医療体制が実施されていた。

武漢市は全国の医療部隊が集中的に派遣されたが、武漢市以外の湖北省全体の各地区における医療体制が不十分なので、中国全土の19の省(直轄市・省・自治区)から医療支援部隊を湖北省の16の地区にそれぞれ派遣して医療体制を補完し構築するというやり方である。

これもあって湖北省は医療崩壊から逃れて、新型コロナ禍を脱することができたのに、3月12日のコラム<習近平の武漢入りとWHOのパンデミック宣言>で書いたように、習近平はまるで「自分の手柄」のような「勝利宣言」をせんばかりの勢いだ。そのコラムにも書いたように中国の民衆はこの現象を「摘桃子(ズァイ・タオズ)」(他人の栄誉を横取りして自分の功績とする))と嘲笑っているが、その勢いは留まるところを知らない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ軍、東部戦線で反攻作戦を展開=ゼレンスキ

ワールド

プーチン氏が増税示唆、戦時中は「合理的」も 財政赤

ワールド

全国CPI、8月は前年比+2.7%に鈍化 補助金や

ワールド

トランプ氏、TV局の免許剥奪を示唆 批判的な報道に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中