最新記事

アメリカ政治

トランプ弾劾で無罪評決、アメリカの民主主義が崩れ落ちる

Protecting Election Integrity

2020年2月13日(木)19時00分
シェリリン・アイフィル(弁護士、全米黒人地位向上協会法的弁護・教育基金会長)

上院での無罪評決の翌日、トランプはホワイトハウスで声明を発表 LEAH MILLIS-REUTERS

<トランプの罷免回避で高まる外国干渉のリスク──公正な選挙制度を守るために有権者にできること>

ドナルド・トランプ米大統領の弾劾裁判が終わった。米上院は2月5日、ジョー・バイデン前米副大統領に対する捜査をウクライナ側に求めたという権力乱用疑惑について、52票対48票でトランプに無罪評決を下した。

今年11月の米大統領選は、ロバート・ムラー元特別検察官らが証言していたように、既に深刻な脅威にさらされている。だが弾劾裁判中に明らかになった問題によって、米大統領選が危険なほど無防備なものになる懸念はさらに現実味を増している。

民主党は2月3日、大統領選予備選挙の初戦であるアイオワ州党員集会を開催。立候補者の1人、バイデンは4位と低迷した。だがそのずっと前から、トランプはバイデンについて捜査するよう複数の外国政府に求めていた。

思い起こせば2016年大統領選で、トランプは民主党候補だったヒラリー・クリントンの電子メールをハッキングするよう、ロシアに呼び掛けている。トランプの「依頼」から数時間以内に、ロシア側はクリントン陣営へのサイバー攻撃を試みた。

アメリカの選挙を外国の干渉から守るには、トランプのウクライナ疑惑を無視する評決を下した上院に圧力をかけることが不可欠だ。今年の選挙を守るはずの法案を直ちに審議・採択せよと、彼らに要求しなければならない。

今年の選挙の公正性を脅かす材料は、トランプが唆す選挙干渉だけではない。共和党の提訴を受けて、ジョージア州やウィスコンシン州の司法当局は有権者登録の大量抹消を命じている。

ソーシャルメディアもリスクを高めている。2016年大統領選で、ロシア側はフェイスブックなどを利用・操作して、米有権者(なかでも標的になったのが黒人有権者だ)に偽情報を拡散させた。

不正選挙を防ぐカギ

公民権団体の請願や圧力にもかかわらず、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は先頃、選挙関連の偽情報を禁止する規定から政治家を除外する「抜け穴」の維持を発表。この危険なポリシーは、ライバル候補の支持者が投票に行かないよう誘導すべく、米国内の政治家が偽のメッセージを拡散する動機になる。

今年の大統領選は、投票時の人種差別を禁じる投票権法(1965年成立)が一部無効のまま行われる2度目の選挙でもある。そのため、選挙当日ぎりぎりに投票所が変更されたり、有権者登録が抹消されたりする懸念が解消されないままになっている。

破滅的なまでに無防備な選挙を回避するには、即座に断固とした行動を取らなければならない。選挙の保護を目的とする法案は下院で複数可決されたが、いずれも上院で足止めされている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ロ外相が近日中に協議へ、首脳会談の準備で=ロシア

ワールド

トランプ氏、プーチン氏とブダペストで会談へ ウクラ

ビジネス

日銀、政策正常化は極めて慎重に プラス金利への反応

ビジネス

ECB、過度な調整不要 インフレ目標近辺なら=オー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体は?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 8
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 9
    ホワイトカラーの62%が「ブルーカラーに転職」を検討…
  • 10
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 1
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中