最新記事

イラン

旅客機撃墜を認めたイランで指導部への抗議デモ 扇動容疑で英大使拘束も

2020年1月12日(日)12時07分

ウクライナ旅客機の撃墜を認めたイラン指導部に対し、国内外で批判が高まっている。国内ではテヘランなど複数の都市で指導部への抗議デモが広がった。写真は撃墜犠牲者の哀悼集会に参加する人びと。1月11日、テヘランで撮影(2020年 ロイターNazanin Tabatabaee/WANA)

ウクライナ旅客機の撃墜を認めたイラン指導部に対し、国内外で批判が高まっている。国内ではテヘランなど複数の都市で指導部への抗議デモが発生。英国大使がデモをあおったとして、当局に拘束される事態となった。

8日に起きた撃墜を否定していたイランは11日、米軍の攻撃に対する警戒中にミサイルを誤射し、176人が乗るウクライナ機を誤って撃ち落としたと認めた。ロウハニ大統領は「この悲惨な過ち」と表現し、「深い遺憾」を示した。

イラン政府首脳と軍部が謝罪したにもかかわらず、イラン各地で指導部に対する抗議活動が発生。デモは首都テヘランやシラーズ、イスファハーン、ハマダーン、オルーミーイェなどに広がった。

半国営のファルス通信も珍しくデモの様子を報道し、およそ1000人がテヘランでスローガンを叫んだと伝えた。

抗議に参加した人々は、米軍に殺害された革命防衛隊のソレイマニ司令官の写真を破った。

イランとの緊張が続く米国のトランプ大統領は、ツイッターで抗議活動への支持を表明。「抗議活動を注意深く見ている。あなた方の勇気に触発されている」と投稿した。

さらに「イラン政府は人権団体が抗議活動の現場で起きている事実を報告することを許可すべきだ。平和的な抗議活動を再び虐殺してはならないし、インターネットを閉鎖してはならない。世界が見ている」と書き込んだ。

テヘランでは当局が英国大使を一時拘束。イランのタスニム通信は、大使がアミール・キャビール工科大学前で反政府活動をあおったとして数時間拘束されたと報じた。

ラーブ英外相は「根拠や説明なく我が国の大使を逮捕したのは、言語道断の国際法違反だ」と声明を発表。「政治的、経済的に国際社会から孤立する道を歩み続けるのか、緊張緩和に動いて外交的な道を歩むのか、イランは岐路に立っている」と主張した。

旅客機を撃墜されたウクライナはイランに賠償を要求。一方、57人の国民が搭乗していたカナダのほか、英国、ウクライナも誤射を認めたのは重要な一歩だとしている。

カナダのトルドー首相は記者会見で、「イランが認めたことは非常に深刻だ。民間機を撃ち落としたのは恐ろしい事態だ。イランは全面的に責任を負わなければならない」と語った。

[ドバイ 12日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20200114issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月14日号(1月7日発売)は「台湾のこれから」特集。1月11日の総統選で蔡英文が再選すれば、中国はさらなる強硬姿勢に? 「香港化」する台湾、習近平の次なるシナリオ、日本が備えるべき難民クライシスなど、深層をレポートする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スペイン、ドイツの輸出先トップ10に復帰へ 経済成

ビジネス

ノボノルディスク株が7.5%急騰、米当局が肥満症治

ワールド

ロシアがウクライナを大規模攻撃、3人死亡 各地で停

ビジネス

中国万科、最終的な債務再編まで何度も返済猶予か=ア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中