最新記事

米朝関係

米朝協議「決裂」で、またミサイル実験の応酬が始まる?

2019年10月16日(水)17時30分
トム・オコナー

米軍が2日にカリフォルニア州の空軍基地で実施したICBMの発射実験 STAFF SERGEANT J.T. ARMSTRONG/U.S. AIR FORCE

<北朝鮮非核化をめぐる米朝協議が物別れに終わった今、北朝鮮はICBMの発射実験を再開する可能性を示唆している>

トランプ米政権と北朝鮮は、北朝鮮の非核化をめぐる合意を目指してきた。しかし関係に再び寒風が吹き始めたようだ。米朝協議で早期に進展がなければ、中断していた大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を再開するかもしれないと、北朝鮮が警告を発している。

北朝鮮外務省は10月10日、国営の朝鮮中央通信を通じて報道官談話を発表。5日にスウェーデンで開催された米朝実務者協議にアメリカ側が「手ぶらでやって来た」せいで、話し合いが決裂したと非難した。

北朝鮮は、アメリカ側が歩み寄りの姿勢を見せず、挑発的な行動を取り続けていると批判している。北朝鮮が特に反発している点の1つは、米軍が2日に核弾頭搭載可能なICBM「ミニットマン3」の発射実験をカリフォルニア州の空軍基地で行ったことだ(冒頭写真)。この発射実験は、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を行った直後に実施された。

「(アメリカのICBM発射実験に対して)同様の措置で対抗することも可能だが......今のところは自制している。しかし、わが国の忍耐心にも限度がある。わが国が永遠に忍耐を続ける保証はない」と、北朝鮮の報道官談話は主張している。

北朝鮮は1年半近くミサイル発射実験を凍結していたが、2月にトランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)党委員長の首脳会談が物別れに終わった後、5月から短距離ミサイルの発射実験を再開していた。そして今回、ICBMの発射実験も再開する可能性を示唆したことになる。

「アメリカがわが国への敵視政策を完全かつ不可逆的に中止すべく態度を大きく改めない限り、今回のような不愉快極まる交渉に臨むつもりはない」と、北朝鮮外務省報道官は述べた。

北朝鮮非核化の夢は、また一歩遠のいたのかもしれない。

<本誌2019年10月22日号掲載>

20191022issue_cover200.jpg
※10月22日号(10月16日発売)は、「AI vs. 癌」特集。ゲノム解析+人工知能が「人類の天敵」である癌を克服する日は近い。プレシジョン・メディシン(精密医療)の導入は今、どこまで進んでいるか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ポーランド家屋被害、ロシアのドローン狙った自国ミサ

ワールド

ブラジル中銀が金利据え置き、2会合連続 長期据え置

ビジネス

米国株式市場=まちまち、FOMC受け不安定な展開

ワールド

英、パレスチナ国家承認へ トランプ氏の訪英後の今週
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中