最新記事
イラン

イランで逮捕された「ゾンビ女」の素顔

Who Is Sahar Tabar? Iranian Instagram Influencer Arrested for Blasphemy

2019年10月9日(水)20時04分
カレダ・ラーマン

こんな顔を作ってシェアしたために逮捕されたタバル。イランでは命で償うことになりかねないのに INSTAGRAM/SAHAR TABAR

<「神を冒涜し若者を堕落させた罪」は大きいが>

「ゾンビと化したアンジェリーナ・ジョリー」のようなルックスで有名になったイランのインスタグラマーが先週末、逮捕された。

イランのタスマニ・ニュース通信によれば、自称サハラ・タバル(22)の容疑は、神の冒とく、暴力扇動、不正利得、若者を堕落させた罪など。死刑にもなりかねない罪状だ。いったい何が彼女をそうさせたのか。

タバルは2017年ごろから、ゾンビのような自撮り写真で有名になった。げっそりと痩せて頬骨が突き出た顔、極端に厚ぼったい唇、上を向いた鼻は、まさにゾンビか醜い魔女の顔。一時はフォロワーが40万人を超えるほどの人気だった(今は削除されている)。

厳格なイスラム教国イランで義務づけられているヒジャブで頭を覆っている写真もあるが、髪が見えていたり、その髪も染めていたり、反体制的な一面もあった。

過激になる顔、後半に19歳のころの素顔


一部では、タバルはアンジェリーナ・ジョリーの顔を目指して50回も整形手術を重ねている、という噂もあったが、後にBBCによって、ほとんどは整形ではなく写真編集ソフトのフォトショップで加工したものだったことが明らかになった。

タバルは、おぞましい顔はメイクとフォトショップで作ったもので、だんだんエスカレートしていったと、2017年にロシアのスプートニクに語っている。また、『マレフィセント』のアンジェリーナ・ジョリーを目指していた、というのも嘘だと否定した。「自己表現の一つで、一種のアートだ。私のファンは、あれが私の本当の顔ではないことを知っている」

イランといえば、女性が公共の場所でダンスを踊っていたり男性に扮してサッカー場に入ったりするだけで罰を受けるお国柄。それでも当局の怒りを買う女性が後を絶たないのは、逆にそれだけ抑圧の大きいせいだ。ゾンビになるのが楽しいと思えてしまうほど。

<参考記事>自撮りヌードでイランを挑発するキム・カーダシアン
<参考記事>イラン人には「信仰がない」が、ダンスという文化はある

20191015issue_cover200.jpg
※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪が16歳未満のSNS禁止措置施行、世界初 ユーチ

ワールド

ノーベル平和賞受賞マチャド氏の会見が中止、ベネズエ

ワールド

カンボジア高官「タイとの二国間協議の用意」、国境紛

ワールド

メキシコ、9日に米当局と会談へ 水問題巡り=大統領
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中