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フリーランスの収入で「普通」の生活ができる人はどれだけいるのか

2019年8月28日(水)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

データは省くが、フリーランスの就業時間は正社員より長い。それでいて収入は少ないのだから、労働時間あたりの時間給にすると相当に過酷な数値が出てくるだろう。

「年間就業日数×週間就業時間×年間所得」のクロス表から、時間給の分布を割り出してみる。「年間250~299日、週43~45時間就業、所得400万円台」の労働者は、それぞれの条件の中央値を使って「年間275日、週44時間(日8.8時間)就業、所得450万円」とみなす。この場合、時間給は450万円/(8.8時間×275日)=1860円となる。このやり方で労働者の時間給を出し、16の階級に割り振った。

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目を疑うようなデータだ。フリーランスは時給500円未満が31.2%と最も多く、44.8%が時給750円未満で最低賃金を割っている。しかし勤め人ではないので、法律による庇護はない。

最近称賛されることの多いフリーランスだが、現実は非常に厳しい。低収入で労働時間も際限がなく、時間給の分布にすると<表2>の通りだ。身体を壊しても何の保障もなく自己責任で、国民健康保険や年金等の支払いも重い負担となっている。

一定以上の仕事を発注している企業は、フリーランスの社会保険の一部を負担する、ないしは年間賞与(ボーナス)を支給する――こういうシステムが検討されてもいい。企業は、フリーランスの人たちの努力や才能に依存して事業を行っているのだから。最近は、フリーランスにベーシックインカムを支給するという発想も出てきている。

超高齢化、情報化社会では、フリーランス的な働き方を欲する人が増え、その需要も高まる。当然、フリーランスの生活保障も必要になるが、その必要性がきわめて高いことは今回のデータから明らかだ。

<資料:総務省『就業構造基本調査』(2017年)

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