最新記事

ブレグジット

EU離脱目指すジョンソンに最大の障壁「バックストップ」とは何か 

2019年8月2日(金)12時38分

バックストップは、英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドの間に厳格な国境管理が導入されることを回避するための取り決め。写真はブレグジット(英国のEU離脱)反対派。1月26日、アイルランドのキャリックカーナンで撮影(2019年 ロイター/Clodagh Kilcoyne)

英国が欧州連合(EU)から秩序ある離脱をできるかどうか、昨年11月に当時のメイ首相がEU側と合意したアイルランド国境管理を巡る「バックストップ(安全策)」条項が、最大の障害となっている。

ジョンソン新首相は就任後、EUと新たな離脱合意を結ぶにはバックストップ条項を撤回する必要があると語っている。

バックストップは、英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドの間に厳格な国境管理が導入されることを回避するための取り決めで、代替的な管理体制が「見つけるまで」、もしくは「見つからなければ」、英国がEUの関税同盟にとどまるというものだ。

英国の議員の多くは、EUの規則と関税に縛られ続けることになるとしてバックストップに反対。英国は独自に他国と通商協定を結べない上、EU司法機関の監督下から抜け出せないと訴えている。

バックストップの要点と、この問題の論点をまとめた。

バックストップの狙い

アイルランド政府はバックストップについて、英国のEU離脱交渉がどう転ぶにせよ、英領北アイルランドとの500キロメートルに及ぶ国境の自由な往来を維持するための「保険」だと説明している。

アイルランドは、国境検査や国境を管理するためのインフラが整備されれば、1998年の北アイルランド和平合意が脅かされかねないため、バックストップは重要な国益だとしている。

英国が北アイルランドを統治し続けることを望む「ユニオニスト」と、アイルランドとの併合を望む「ナショナリスト」の30年間に及ぶ闘争では、3600人以上の死者が出た。国境の開放は、ナショナリストが抱く英統治への怒りを鎮めるのに一役買った。

EUと英国はともに、アイルランド国境に物理的なインフラを設けることは望まないと表明している。また双方とも、バックストップは発効しないのが望ましいとしているが、代替策の合意には至っていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ

ワールド

米国防長官、「中国の脅威」警告 アジア同盟国に国防

ビジネス

中国5月製造業PMIは49.5、2カ月連続50割れ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 6
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 9
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 10
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中