最新記事

宇宙

「政府は真実を隠している!」 UFOブームがアメリカに再び襲来

DO ALIENS EXIST?

2019年8月2日(金)19時15分
キース・クルーア(ジャーナリスト)

11年のMUFONのシンポジウムで展示された宇宙人をテーマにしたアート ROBERT GAUTHIERーLOS ANGELES TIMES/GETTY IMAGES

<政府による隠蔽の暴露? ただの金儲け? 米軍情報機関出身のスーパースター参戦で、「UFO研究」が謎の盛り上がり>

「何を見たのか、私は分かっている」

コンサルティング会社の管理職テリーザ・ティンダル(39)は18年7月下旬、UFO(未確認飛行物体)の存在を信じるきっかけとなった出来事についてそう語った。場所はアリゾナ州トゥーソン。夕方の空を、丸い金色の物体が飛び回っていた。気象観測気球? とんでもない、と彼女は思った──あれは絶対にUFO、そうとしか考えられない。

ニュージャージー州チェリーヒルのホテル、クラウン・プラザ。ここでは1年で最大のUFOイベントと称する「ミューチュアルUFOネットワーク(MUFON)」のシンポジウムが開かれていた。ティンダルと同様の確信を持つ400人の来場者の目的は、地球外生命体やUFOについて語り合うことだ。「目撃した人はとても多い」と、ミシガン州から来たクリスティーヌ・ティッセ(44)は本誌に語った。

シンポジウムの講演は、「農村地帯での原因不明の失踪事件」「火星からの報告」といった謎めいた演題が多い。後者のテーマで話をした物理学者は、7万5000年前の銀河間核戦争が火星文明を破壊したとの説を披露した。会場にはエイリアンによる誘拐の被害者であると主張し、93年の映画『ファイヤー・イン・ザ・スカイ/未知からの生還』のモデルになったトラビス・ウォルトンのような有名人もいた。

しかし、18年には特別なアトラクションが用意されていた。新たなスーパースター、ルイス・エリゾンドの登場だ。

ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙は17年末、「先端航空宇宙脅威識別プログラム」についての記事を1面に掲載した。この国防総省の秘密プロジェクトは、「UFOについての報告を調査した」ものだという。

元大統領首席補佐官も参入

ヤギひげを蓄え、がっしりした体にタトゥーを施したエリゾンドは米軍情報機関の元職員。このプロジェクトが07年にスタートしてから数年後に責任者に任命され、国防総省の広報によると、12年に中止されるまでその任にあった(エリゾンドは今もプロジェクトは継続中だと主張している)。

彼は17年、不十分な支援と不必要な秘密主義に抗議して国防総省を辞めた。ジェームズ・マティス国防長官宛ての辞表には、「なぜこの問題にもっと時間と労力を費やさないのか」とある。

エリゾンドは間もなく、共に真実を探求する同志を見つけた。ポップ・パンクバンド、ブリンク182の元ギタリストで、「エイリアンズ・エグジスト」(宇宙人はいる)という曲の生みの親であるトム・デロングだ。デロングは17年、非営利団体「トゥ・ザ・スターズ芸術科学アカデミー」を立ち上げ、エリゾンドが「表の顔」になった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資

ワールド

マスク氏、FRBへDOGEチーム派遣を検討=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中