最新記事

米経済

米ドル安誘導の予測、通貨切り下げ競争も排除できず

Trump Considers Weakening Dollar Ahead Of 2020 Elections

2019年7月18日(木)18時04分
アーサー・ビラサンタ

トランプ政権下では常識は通用しない wara1982/iStock.

<「強いドル政策」はかなぐり捨てて、再選のために動く可能性>

ドナルド・トランプ米政権がドル安誘導をする可能性をほのめかしている。過去4つの政権が支持してきた「強いドル政策」を捨てるというのだ。

トランプは以前から、中国やEU(欧州連合)などが意図的な通貨安でアメリカに輸出ドライブをかけていると声高に非難してきた。そのトランプがドル安誘導も辞さない姿勢に転じたのは、自ら世界の国々に仕掛けてきた貿易戦争の煽りで停滞している米経済の成長を後押しするのが狙いだろう。

政治的な得点稼ぎのためにドル相場を押し下げたいというトランプの考え方は、何も新しいものではない。複数の報道によれば、トランプは7月に入ってから側近に対して、ドル安誘導の方策を探せと命じた。2020年の大統領選前に景気を押し上げ、再選の可能性を高めるためだ。

トランプは7月3日のツイートで、中国と欧州は「為替操作ゲーム」に興じていると非難し、アメリカもそれに対抗すべきだとの考えを示した。

「何でもあり」の雰囲気

世界的な債券運用会社ピムコは、トランプは今後ドル安誘導に突き進むだろうと確信している。同社のマネージング・ディレクター兼グローバル経済アドバイザーのヨアヒム・フェルズは、トランプやトランプ政権の高官たちは、ドル安への関心を公言してきたと指摘。このことは、連邦政府が今後、為替市場に介入しかねないことを示唆していると彼は言う。

「主要な貿易国・地域の間でみられる通貨の冷戦は、2018年のはじめから休止状態だったが、いま再燃しつつある」とフェルズは指摘。さらに投資家に対するリポートには、こう書いた。「アメリカをはじめとする主要国の政府や中央銀行が、自国通貨の価値を引き下げる直接介入に踏み切って本格的な通貨切り下げ戦争にエスカレートする可能性は短期的にはないものの、もはや完全には排除できなくなった」

ゴールドマン・サックスおよびバンクオブアメリカ・メリルリンチのストラテジストも、政府による市場介入のリスクは低いが「高まりつつある」と指摘。ゴールドマン・サックスのアナリストたちは、「トランプ大統領の通商政策にはこれまで何度も驚かされてきたので、市場は『何でもあり』の雰囲気になっている」と言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始へ

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの

ビジネス

中国の主要国有銀、元上昇を緩やかにするためドル買い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中