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「今こそ賃金格差をなくそう」、ラピノー選手の優勝スピーチが聴衆を巻き込んだ 

2019年7月16日(火)17時30分
安部かすみ

そんな背景がありつつ、この日の表彰セレモニーのスピーチは、エンタメ性を出して喜びを表しながら、真意もうまく主張しているのが印象的だった。

共同キャプテンで大会MVPと得点王の個人2冠を達成したミーガン・ラピノー(Megan Rapinoe)選手は、壇上で踊ったかと思えば、その後真面目な面持ちで、チームメイト、ファン、大会関係者、そしてパレードのために車両通行止めにしてくれたニューヨーク市に対して謝辞を述べた。そして、スピーチにアメリカらしいジョークをいくつか添えながら、聴衆を引き込んだ。



感極まって放送禁止のFワードで「ニューヨーク最高ー!」と叫び、生放送されるなど、度が過ぎるシーンもあったが...。

ラピノー選手のスピーチの概要


「チームにはピンクの髪、紫の髪、タトゥーしてる子、白人、黒人、ストレート、ゲイ(同選手は同性愛者のため、大きな笑いが起きる)、
いろんな人がこのチームにはいて、誇りに思っている。
大統領選出馬より、このチームといる方がいいわ」
(大統領選に出馬するデブラシオ市長も爆笑。注:同選手は反トランプ派を公言している)
(途中割愛)
「よりよい人になりましょう。憎むより愛しましょう。
発言するばかりではなく、耳を傾けましょう。
ここにいる人もいない人も賛同する人も反対する人も私たち全員に、
コミュニティを、周囲の人々を、世界を、よりよい場所にするための責任があります。
私たち選手がよいプラットフォームになるから、みんなで話し合い、協力し合い、できることをやりましょう。
自分の固定概念から一歩抜け出し、さらに大きな自分になりましょう」

優勝会見は大きなメッセージ性のある内容で締めた。

壇上ではほかにも、ニューヨーク州のクオモ知事が「男女均等はニューヨーク州の法律で定められているものだ」と、デブラシオ市長は「これだけの功績を残したのに格差があるのは受け入れられない。今こそ変化のときだ」と、女子チームを支持することを表明した。

このようなスピーチの手法や問題提起のアプローチは日本ではなかなか真似できないものかもしれないが、喜びを派手に表現したり、真面目なスピーチにジョークを添えたり、重いトピックスをここぞとばかりにうまく持ち出すのは、さすがはアメリカらしいと思った。みなさんはどう思われただろうか?

これらさまざまな議論があちこちで沸き起こりながら、アメリカの賃金格差=真の男女平等への戦いはこれからも続いていく。

※この記事は、ヤフー個人からの転載です。

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