最新記事

北朝鮮

トランプと金正恩が合意した核問題協議再開 対立する問題点と展開は?

2019年7月6日(土)09時19分

トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は先月30日に南北軍事境界線がある板門店で会談し、核問題に関する協議を再開して交渉チームを設置することで合意した。写真は板門店で6月30日撮影(2019年 ロイター/KCNA via REUTERS)

トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は先月30日に南北軍事境界線がある板門店で会談し、核問題に関する協議を再開して交渉チームを設置することで合意した。

しかし北朝鮮の非核化と米朝関係正常化のどちらを優先するかなどを巡り両国の溝は依然大きく、実務者の協議ではこれまでの話し合いで合意を妨げてきた意見の食い違いが再燃しそうだ。

主な論点と見通しをまとめた。

◎非核化と制裁解除巡る対立

2月のハノイ会談でトランプ氏は北朝鮮に全ての核施設を廃棄し、核兵器と核燃料を米国に引き渡すよう求めた。これに対して金委員長は寧辺の核施設を廃棄する見返りに制裁を解除するよう提案した。

その後非核化の進め方と制裁解除のタイミングを巡る意見の相違を埋めるべく両国が何らかの歩み寄りを図った兆しはみられない。

そもそも両国の間では非核化の定義が異なり、北朝鮮側は朝鮮半島から核兵器の脅威を除くという観点から協議している。

専門家の間からは、トランプ氏が昨年シンガポールで行った最初の首脳会談の共同声明で「新たな米朝関係の構築」を最優先課題とし、「完全非核化に向けた北朝鮮の取り組みの確約」を3番目の項目に据えたことが失敗だったとの指摘も出ている。

米紙ニューヨーク・タイムズは1日、情報源を明かさずに、トランプ政権が北朝鮮への態度を軟化させ、核開発凍結で合意を目指す案が浮上していると報じた。ロイターはこの報道内容を確認していない。

◎寧辺の核施設が論争の中心

論争の中心になっているのが寧辺の核施設。ハノイ会談決裂後に北朝鮮の外務省当局者は、同核施設について米国の専門家と共同でほぼすべてを廃棄する「かつてない提案」を行ったと述べた。

米国の交渉チームは北朝鮮側からこうした提案があったことを認めたが、具体的にどの施設を対象とするかや北朝鮮が見返りとして要求している制裁解除の範囲に関する話し合いがまとまらなかったと述べた。

たとえ新たに発足する交渉チームが寧辺の核施設の廃棄を取り上げても、協議には数年要する公算が大きく、トランプ大統領の任期よりも大幅に長引くだろう。

韓国の当局者によると、寧辺の核施設廃棄は北朝鮮の核開発計画にとって大きな打撃だ。ただ専門家は、北朝鮮が他にも秘密に多くの施設を建設しており、一定程度の核開発能力の維持が可能だと警告している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドGDP、7─9月期は前年同期比8.2%増 予

ワールド

今年の台湾GDP、15年ぶりの高成長に AI需要急

ビジネス

伊第3四半期GDP改定値、0.1%増に上方修正 輸

ビジネス

独失業者数、11月は前月比1000人増 予想下回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中