最新記事

イギリス

英国次期首相にボリス・ジョンソン、24日就任へ 「合意なき離脱」強硬に警戒の声も

2019年7月24日(水)10時33分

ジョンソン氏は、離脱協定案の争点となっているアイルランドとの国境問題に関するバックストップ(安全策)条項の撤廃を目指している。

ジョンソン氏の勝利発表前、欧州委のティマーマンス筆頭副委員長は、EUが離脱協定案を変更することには同意しないと言明していた。

同氏は記者会見で「英国はEUと合意した。EUは合意を堅持する」とし、「最良の合意内容だ」と語った。ジョンソン氏の主張に耳を傾けるとしつつも、合意なき離脱は英国にとり最悪のシナリオと警鐘を鳴らした。

また、ホルムズ海峡での石油タンカーの拿捕(だほ)などで、英国との緊張が高まっているイランのザリフ外相もジョンソン氏に祝意を表明。「イランは対立を望んでいない」と強調した。

ジョンソン氏は米ニューヨーク生まれ。英国の名門イートン校卒業後、オックスフォード大学に進み、経営コンサルタントになったものの1週間で退職。その後ジャーナリズムの道に進み、英タイムズ紙に就職したが、コメントを捏造したとして解雇された。デイリー・テレグラフ紙では、現在のEUの前身となる欧州経済共同体(EEC)を風刺する報道で知られ、当時首相だったマーガレット・サッチャー氏に気に入られていたという。

その後、政治家に転身したが、不倫問題でうそをついていたことが明るみに出たことで、保守党の役職を解任された。2016年には一躍ブレグジットの「顔」となったが、離脱の是非を問う国民投票前、英国がEUにとどまれば毎週3億5000万ポンド(約4億4000万ドル)のコストを負担することになるという誤解を招くキャンペーンを打ち出したとして提訴された。

こうした背景から、ジョンソン氏の首相としての資質に疑問を投じる向きも少なくない。

野党・労働党のコービン党首は、ジョンソン氏が富裕層向け減税策を約束し、合意なきEU離脱を提唱することで、保守党の党首選で票を獲得したと批判。「しかし、英国の支持を勝ち取ってはいない」と述べた。

為替市場では、ジョンソン氏の勝利がすでに織り込まれていたこともあり、ポンドはほぼ変わらず。「合意なき」離脱を巡る懸念から、ポンド/ドルはここ数週間で約2年ぶりの安値となる1.24ドル近辺で推移している。

[ロンドン/ブリュッセル/パリ 23日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ヤム・ブランズ、ピザハットの売却検討 競争激化で

ワールド

EU、中国と希土類供給巡り協議 一般輸出許可の可能

ワールド

台風25号がフィリピン上陸、46人死亡 救助の軍用

ワールド

メキシコ大統領、米軍の国内派遣「起こらない」 麻薬
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 10
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中