最新記事

金融

「魔の時間」襲うフラッシュクラッシュは為替市場の新常態になるか

2019年6月7日(金)12時31分

行動規範は助けになるか

通貨の動きを理解し、それに影響を与えようという政策当局者の試みは、統制がなく、民営で分散化した外国為替市場が持つ自由な特性によって阻まれている。

中銀と民間セクターによって策定された「グローバル外為行動規範」は、公正で適度に透明性の高い外国為替市場の促進を目的としているが、法的拘束力はない。

極端な値動きを抑える対策が導入された株式市場と比べ、外国為替市場については、当局者がまだ議論を重ねている段階にある。

フラッシュクラッシュは、ニューヨーク連銀が主催する業界団体、為替市場委員会での2度にわたる直近会合と、5月開催された中銀と民間で構成する「グローバル外為市場委員会」(GFXC)の会合で取り上げられた。

「このフォーラムでフラッシュクラッシュとその誘因を理解し、グローバル外為行動規範をどのように適用すれば、公正で効果的な外国為替市場がつくれるのか考えるのは重要だ」と、GFXCの議長を務めるニューヨ-ク連銀の市場グループ責任者サイモン・ポッター氏はロイターに語った。

外為市場で、劇的かつ長期的な乱高下が起きた場合、中銀は為替介入することで、その緩和を試みることは可能だが、議論を呼ぶだろう。

「大半の中銀にとって、第1の使命は価格の安定、そして第2の使命は金融の安定だ」とピクテ・アセット・マネジメントのシニアエコノミスト、ニコライ・マルコフ氏は語る。

「日中の動きで起こる大きな値動きが、金融の安定に悪影響を与えたり、銀行間の流動性を逼迫(ひっぱく)させたりしない限り、中銀は展開を監視するが、日中の動きに反応するべきではない」と付け加えた。

また、そういった対応は高くつく可能性もある。

英財務省によると、1992年の英ポンド危機で同国は自国通貨を守るために33億ポンドを投じ、さらにそれは無益な試みだった可能性がある。

「これまでのフラッシュクラッシュが市場流動性の枯渇によって起きたことを考えると、中銀がその発生を防げるか疑問に思っている」と 米金融大手バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)のシニアストラテジスト、ニール・メラー氏は言う。「こうした問題に取り組まない限り、同じような価格変動は起き続けるだろう」

(翻訳:宗えりか、編集:下郡美紀)

[ロンドン/ニューヨーク ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中