最新記事

SNS

インド、TikTokのダウンロード禁止 中国製が理由?

2019年4月21日(日)14時13分

インド政府がこのほどショート動画配信アプリ「TikTok」の新規ダウンロードを禁止した。写真は2月撮影(2019年 ロイター/Danish Siddiqui)

インド政府がこのほどショート動画配信アプリ「TikTok」の新規ダウンロードを禁止した。デジタル企業幹部らは、世界屈指の重要な市場である同国で業界への監視が強化されるのではないかと、警戒感を募らせている。

TikTokは、特別な効果を施した15秒の動画を共有できるアプリ。調査会社センサー・タワーによると、インドではこれまでに3億人近いユーザーがダウンロードするほど人気が爆発している。世界のダウンロード総数は10億件超。

しかしインドは基本的に保守的な社会であり、一部の政治家からアプリに批判が飛び出した。シェアされている動画の大半は、ダンスや特定の動作を大勢で模倣する「ミーム(meme)」だが、中には肌を露わにした若者が映っているものもあるからだ。ナイフと銃を使って動画を撮ろうとして死亡した事故も何件か報道されている。

タミル・ナードゥ州のM・マニカンダン情報技術(IT)担当大臣は2月、TikTokで「少女などが酷い振る舞いをしている」と嘆いた。

同州のチェンナイ高裁はこのほど、TikTokがポルノを後押ししているとして政府に禁止を要請。これを受けてインドでは17日にグーグルとアップルのアプリストアからTikTokが消え、事後的に国の情報技術省が両社に指令を出した。

既にダウンロード済みのアプリには、禁止措置は適用されない。

デジタル業界の幹部や弁護士、言論の自由を提唱する活動家などは同日、ロイターの取材に対し、TikTokの禁止は憂慮すべきことだと述べた。

TikTokの広報は同日、インドの司法制度を信頼しており、国内ユーザーが歓迎する結果になることを期待していると述べた。高裁は24日に再度、この問題を審理する。

グーグルは16日夜、個々のアプリについてはコメントしないが、国内の法律に従うと述べた。アップルからは取材要請に対する返信が得られていない。

重要な市場

インドではフェイスブック傘下のメッセージングアプリ「ワッツアップ」も当局からフェイクニュース(偽ニュース)問題などへの取り組みを改善するよう圧力をかけられている。ワッツアップにとってインドは最大の市場だ。

また米動画配信大手ネットフリックスは昨年、一部コンテンツが元インド首相を侮辱する内容だとの苦情を受けて法廷闘争に巻き込まれた。

インドはスマートフォン利用者が急増しているため、ソーシャルメディアやモバイル・デジタル・コンテンツ企業にとって重要な市場だ。

拒否反応

TikTokを運営する中国の北京字節跳動科技(バイトダンス・テクノロジー)は先週インド最高裁で、ダウンロード禁止は言論の自由を阻害すると訴えたが、却下された。

インド与党に近いヒンズー教団体は17日、TikTokは「インドの文化と道徳感に反している」とし、禁止措置に歓迎の意を表明した。

こうした考え方に共感する声は、お茶の間からも聞かれる。ある専業主婦は「(TikTokは)小さい子供から老婦人まで、全員の心を汚します。我が家を訪れる人すべてに、TikTokを話題にしないよう厳しく言い渡しています。中毒性があるし、不要です」と語った。

(Aditya Kalra記者、Sankalp Phartiyal記者)

[ニューデリー/ムンバイ ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ビットコイン一時9万ドル割れ、リスク志向後退 機関

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中