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レーダー照射問題が暗示する「日米韓同盟」の未来

2019年1月10日(木)16時30分
前川祐補(本誌記者)

調停役なき日韓関係は何を示唆するのか。考え得るのは「日米韓同盟」の実質的な瓦解だ。

歴史問題で仲たがいしがちな日韓とアメリカがこれまで足並みをそろえてきたのは、北朝鮮という共通の敵がいたからにほかならない。その「敵」をめぐり、アメリカは単独交渉で対応し始めた。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権も北朝鮮との融和に邁進している。

非核化に進展がなくとも文が融和策を進めるのは、米朝関係が良好なうちに南北統一への足掛かりを築きたいという思いのほか、保身もあるだろう。国内の経済政策が不評続きで支持率が低下するなか、融和政策は文政権の屋台骨になっているからだ。

3国のうち2国が日本とは別のベクトルで動きだした以上、「同盟」関係は意味を失っている。それでも日韓外交筋からは「トランプ政権が終わるまでの辛抱」と、日韓の関係修復を盟主にすがろうとする声も聞かれる。ただ共通の利害なくして3国の関係が成立しないのは自明で、それ自体は問題ではない。

むしろ問われるのは日韓外交の真価だろう。これまで2国間の問題解決を陰に陽にアメリカに委ねてきた2国が、盟主なき日韓関係という「新常態」をどう安定的に構築するのか。激しさを増す日韓の応酬から、その青写真は見えてこない。

<本誌2019年1月15日号掲載>

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