最新記事

中国

「平和統一」か「武力統一」か:習近平「台湾同胞に告ぐ書」40周年記念講話

2019年1月6日(日)19時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

2019年1月5日 日米に救いを求める台湾の蔡英文総統 Fabian Hamacher-REUTERS

1月2日、習近平は「台湾同胞に告ぐ書」発表40周年記念で講話し、2020年の台湾総統選に向けて「一国二制度」による平和統一を選択しない限り、武力統一もあり得ると脅した。1,2年以内に何かが起きるだろう。

「台湾同胞に告ぐ書」40周年記念とは

1979年1月1日、鄧小平は「台湾同胞に告ぐ書」を発表した。その日は米中国交正常化が正式に成立した日でもあり、また前年には日中平和友好条約が締結されてもいる。

だから中華人民共和国(大陸側)は、それまで「中国」を代表していた中華民国(台湾)は国連において存在しないとして、「台湾同胞」に呼びかける絶対的に有利な立場に立つに至ったのである。そのことを可能にしたのは大統領再選を狙った当時のニクソン大統領であり、その先兵を務めたキッシンジャー元国務長官である。1971年に忍者外交によって訪中してお膳立てをした。アメリカが、そしてキッシンジャーが音頭を取って「台湾を見捨て、中華人民共和国を国連に加盟させ、結果的に中華民国を国連から追い出し、中華人民共和国を国連に加盟させて」、新たな国際情勢を創り出したのである。

その情勢に乗って発表したのが「台湾同胞に告ぐ書」である。

同書では平和統一を呼びかけ、1949年(中華人民共和国建国)以来、離別した親族がどれほど耐え難い思いで郷愁の念に駆られていたかを訴えた。そして今こそ平和統一により中華民族は一つになろうではないかと呼びかけた。

同時に鄧小平は「一国二制度」を台湾に持ちかけたが一蹴されたので、やむなくこの制度を香港とマカオに適用すべく、当時のイギリスのサッチャー首相に同制度を持ちかけ、香港とマカオで実施されている。

中国では末尾に「9」が付く年になると、元日前後に「台湾同胞に告ぐ書」○○周年記念大会を開催するが、今年は殊のほか、盛大に催された。

1979年1月1日に全人代(全国人民代表大会)常務委員会が同書を発表したことから、毎回この記念大会を主宰するのは全人代常務委員会である。今年も全人代のホームページが40周年記念大会の模様と習近平の講話(全文)を発表している

平和統一か、武力統一か

前掲の全文を、漢字を拾ってご覧いただければ、おおむねの意味をご理解頂けると思うが、盛んに「和平統一」と「一国両制」という言葉が多いことが字面からも見て取れる。

注目すべきは「第三」の最後のパラグラフで「第四」の直前に「中国人不打中国人」という言葉があり、その下の行に(繁体字に書き直すと)「不承諾放棄使用武力」というフレーズがあることだ。直訳すれば「武力を使用することを放棄するのを承諾しない」となるが、日本語的にスムーズにすると「我々は決して武力行使を放棄しない」という意味である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ファイザーと薬価引き下げで合意、関税減免と引き換え

ビジネス

米政府閉鎖の経済への影響、期間と規模次第=シカゴ連

ビジネス

米国株式市場=3指数が続伸、月間・四半期でも上昇 

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、雇用統計の発表遅延を警戒
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 3
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かった男性は「どこの国」出身?
  • 4
    10代女子を襲う「トンデモ性知識」の波...15歳を装っ…
  • 5
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 6
    通勤費が高すぎて...「棺桶のような場所」で寝泊まり…
  • 7
    カーク暗殺の直後から「極左」批判...トランプ政権が…
  • 8
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    博物館や美術館をうまく楽しめない人は...国立民族学…
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 3
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒りの動画」投稿も...「わがまま」と批判の声
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 8
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中