最新記事

韓国

北朝鮮への対応巡り韓国・文政権内に亀裂? 非核化交渉の妨げに

2018年12月11日(火)18時07分

12月5日、韓国政府内では、北朝鮮への対応を巡り「亀裂」が生じている。写真は握手を交わそうとする南北首脳。非武装地帯で4月代表撮影(2018年 ロイター)

長年にわたり対立してきた南北間の連絡はこの10年間、実質的に途絶えていたが、韓国政府はこの夏、北朝鮮側の開城(ケソン)市に連絡事務所を設置する準備を進めていた。

このとき、韓国政府当局者の間では、米国政府の同意を得るべきかどうか、白熱した議論があった。

当時の状況を知る関係者2人がロイターに語ったところでは、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の側近数人は、これは南北朝鮮だけの問題であり、同盟国である米国を巻き込む必要はない、と強調したという。

だが、このときの会合に出席した複数の当局者にとって意外だったのは、趙明均(チョ・ミョンギュン)統一担当相が、この韓国政府の計画は、核開発プログラムを巡り北朝鮮に科されている制裁措置に違反する可能性があるため、米国政府に相談しなければならないと主張したことだった。

英国、ドイツ、スウェーデンなど20数カ国は、北朝鮮の首都・平壌にすでに大使館を開設している。他の当局者は、これに比べれば、提案されている連絡事務所は北朝鮮の接点としてはるかに低いレベルのものだと考えていた。

そしてもちろん彼らは、趙統一担当相が制裁の厳格な実施を主張する先頭に立つとは予想していなかった。趙氏は文大統領からの指名で統一担当相となり、その主要任務は、和解と協力を育み、最終的には北との統一へとつなげることである。

趙氏の30年に及ぶ官僚としてのキャリアは南北統一と不可欠に結びついており、2008年には北朝鮮政府に対する姿勢があまりに融和的であるとして統一省から外されたことさえある。

趙氏やベテラン外交官らの提言を受けて、韓国政府は最終的に米国からの同意を求めたうえで、9月に連絡事務所の開設にこぎつけた、と情報提供者の1人は言う。

情報提供者はいずれも、配慮を要する問題であることを理由に匿名を条件として取材に応じた。

趙氏はコメントしなかったが、統一省のある高官によれば、同省は趙氏に対する批判は認識している、という。

「南北関係はユニークだが、これまでも困難は伴っていた。北朝鮮側の不誠実さもある。われわれが直面しているジレンマというか、これがわれわれの運命なのだ」とこの高官は、やはり問題の難しさを理由に匿名で語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米CIA、中国高官に機密情報の提供呼びかける動画公

ビジネス

米バークシャーによる株買い増し、「戦略に信任得てい

ビジネス

スイス銀行資本規制、国内銀に不利とは言えずとバーゼ

ワールド

トランプ氏、公共放送・ラジオ資金削減へ大統領令 偏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 8
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中