最新記事

ブレグジット

英メイ首相、EU離脱案の議会採決を延期 ポンドは全面安に

2018年12月11日(火)11時12分

12月10日、メイ英首相は、11日に予定していた欧州連合(EU)離脱案の議会採決を延期すると表明した。提供写真(2018年 ロイター/ Parliament TV)

メイ英首相は10日、11日に予定していた欧州連合(EU)離脱案の議会採決を延期すると表明。これを受けて、ポンドは全面安の展開となった。

メイ首相は議会で「離脱案を巡っては北アイルランド問題を含め重要論点の多くで明らかに幅広い支持が得られているが、その一方で広範かつ根強い懸念も残されている」と指摘。「もしあす投票に踏み切れば離脱案は大差で否決される。したがって現時点で議会の分裂を助長しないよう、あすの投票を延期する」と語った。

首相は、EU離脱という国民の意思を実現するのか、それとも再度国民投票にかけて国の分裂を広げるのか、議会はどちらを望んでいるのかと質した上で「もし一歩後退するというのであれば、議会はそもそも『ブレグジット(英国のEU離脱)を望んでいるのか』という根本的な問題に直面することになる」と述べた。

アンドレア・レッドサム下院院内総務は、メイ政権は採決の日程を今後詰めるとしている。

メイ首相が採決延期を発表したことを受け、英ポンドは対ドルで一時1.2507ドルと、2017年4月以来の安値を付けた。また、対スイスフランで1年3カ月ぶり、対円で4カ月ぶり、対ユーロで3カ月ぶり安値をそれぞれ更新した。

テンパス(ワシントン)のシニア外為トレーダー、ジュアン・ペレス氏は「英ポンドは過去2年間にわたり解決への期待に翻弄されながら緩やかに下落してきたが、ここに来て単一市場からの離脱は繁栄への道ではないことがはっきりとしてきた」と述べた。

議会採決の延期によって、市場では再び「合意なき無秩序離脱のリスク」を警戒する声が高まっている。

EUは再交渉の可能性否定

メイ首相は、議会採決を断念したわけではないと強調した上で、重要論点である北アイルランド問題のバックストップ(安全策)を巡り、英国がEU規則を永久に順守するような状況にならないよう、EU側に一段の確約を求める考えを明らかにした。

これに先立ち、欧州委の報道官は、メイ首相と合意した離脱合意について欧州委は再交渉を行わないとの立場を示している。

トゥスクEU大統領は、EUは13─14日に開く首脳会議で英国のEU離脱が議題に取り上げられることを明らかにし、議会による離脱プロセス批准の後押しなどが討議内容に含まれるとしながらも、離脱合意案の再交渉は行わないと言明。「バックストップを含め、合意は再交渉しない」と述べた。ただ「合意なき離脱シナリオへの対応についても討議する」とした。

ドイツのマース外相も、離脱合意案の修正はないとの考えを表明。「双方が支持した合意が得られている。われわれは秩序立った離脱を望んでいる」述べた。

英野党労働党のコービン党首は、現政権はもはや機能していないとし、政権を明け渡すようメイ首相に要求。労働党の報道官は「われわれは最も成功する見込みが高いと判断した時に内閣不信任案を提出する」と述べた。

*内容を追加しました。

[ロンドン 10日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

サマーズ氏、オープンAI取締役辞任 エプスタイン元

ワールド

英軍機にロシア船がレーザー照射、国防相「軍事的選択

ビジネス

エヌビディア、強気見通しでAIバブル懸念は当面後退

ビジネス

メタ、豪で12月10日から16歳未満のSNSアクセ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 7
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 8
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 9
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中