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アメリカ政治

中間選挙で下院敗北の米共和党 さらに「トランプ色」に染まるか

2018年11月8日(木)14時45分

下院の議席を守った共和党議員も、新たに多数派となった民主党と協力することには、ほとんど関心を示さないだろう。すると、連邦議会における共和党勢力は上院に集約され、政権は手詰まり状態に陥る。

「民主党主導の下院で、大統領が何らかの政策を実現したいならば、反対側に歩み寄らざるを得ない」。民主党の世論調査専門家であるシカゴのジェイソン・マクグレイス氏はそう指摘する。

「今までトランプ大統領は、そういう素振りさえ見せたことがない

が、もしこれを機に、単なる点数稼ぎではなく、統治をしたいと考えるようになるとすれば興味深いことだろう」と付け加えた。

郊外の変化

今回、民主党が議席を奪還した選挙区で起こった変化は、共和党にとっては長期的な打撃となり、民主党にとっては、かつてはライバルの固い地盤だった郊外地域において攻勢に転じるチャンスとなる。

こうした地域は全国平均よりも教育や所得の水準が高く、トランプ大統領に対する懐疑的な見方が広がっている。

共和党はすでに、中産階級のトランプ支持者で白人男性、キリスト教福音派といった従来の地盤を超えて勢力を広げることに苦戦している。 女性や郊外に住む住民、大卒の有権者のあいだでは支持が低迷しており、若年層やマイノリティの有権者の支持を勝ち取る力も、ほとんど示せていない。

米国議会における勢力が縮小したことで、同党のトランプ大統領に対する忠誠がいっそう強まる流れになるとすれば、こうした傾向はほぼ確実に続くだろう。

上院では、2016年の大統領選でトランプ氏が勝利した州、例えばインディアナやノースダコタでは、民主党中道派の現職議員を破って保守派の共和党候補が議席を得たが、彼らがその勝利を大統領のおかげであると考えても不思議はない。

さらに、共和党で最も激しくトランプ大統領を批判していたボブ・コーカー、ジェフ・フレーク両上院議員は、今回の選挙で引退した。政策面はさておき、論調において大統領と食い違う場合があった共和党のポール・ライアン下院議長も同様である。

こうした条件がそろうことで、トランプ大統領は党内において2年前よりもさらに支配的な立場を得ることになる。そして、選挙戦において地方各州を重点的に回ったトランプ氏は、これらの州における上院選での勝利を、依然として自らの支持者を投票所に向かわせる力を持っている証拠として示すことができる。

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