最新記事

アメリカ外交

アメリカとサウジ、記者失踪巡り交錯する利害と思惑

2018年10月18日(木)11時29分

●対イエメンとイラン

サウジはイエメン内戦に介入しているが、一般市民の犠牲が増えると米国は懸念している。カショギ氏の一件で、米議会では米国の関与縮小を求める声が高まる可能性がある。

イエメンでは、サウジ主導の連合軍が支援する暫定政権と、イランが後ろ盾のイスラム教シーア派系武装組織「フーシ派」の戦闘が激化。米軍は、サウジ主導の連合軍を給油や情報収集面で支援しており、サウジ・イエメン国境ではフーシ派からのミサイルを迎撃するため米軍の特殊部隊が配置されている。

スンニ派のアラブ人が多数を占めるサウジアラビアとイスラム教シーア派のイランがしのぎを削る中東地域では、イエメンは覇権争いの単なる現場の1つに過ぎない。

米国とサウジはイランを封じ込めたい思惑では一致するものの、イランやシリア、レバノンを抑制する防波堤の役割は米国がサウジに頼っているのが実情だ。

●中東和平

トランプ大統領の義理の息子、ジャレッド・クシュナー氏はイスラエルとパレスチナの和平交渉に意欲を見せているが、サウジの協力を得るのは難しそうだ。

大統領は、エルサレムをイスラエルの首都と認め、米国大使館を移転する考えだが、もしサウジの支援が得られなければ、移転計画にも暗雲が垂れ込めそうだ。

●テロ対策

2001年9月11日に米同時多発攻撃が起きた際、国際テロ組織アルカイダへの反応が遅いとして米国はサウジを責めた。

だが今では、サウジ軍部が家族や親族のネットワークを生かして収集する機密情報がテロ対策に欠かせないものとなっている。

こういった協力体制は米国とサウジ双方にとって重要な意味があり、米国がカショギ氏の一件に過剰に反応することで、両国関係を悪化させる可能性は低そうだ。

[ワシントン 16日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界の石油市場、26年は大幅な供給過剰に IEA予

ワールド

米中間選挙、民主党員の方が投票に意欲的=ロイター/

ビジネス

ユーロ圏9月の鉱工業生産、予想下回る伸び 独伊は堅

ビジネス

ECB、地政学リスク過小評価に警鐘 銀行規制緩和に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 5
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 6
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 9
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 10
    【クイズ】韓国でGoogleマップが機能しない「意外な…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中