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中間選挙へ共和党候補が警戒する「トランプ」という踏み絵

2018年10月16日(火)17時15分

綱渡り

トランプ支持者を疎外することなく、不満を抱いている共和党支持者の情熱を取り戻すのはたやすいことではない、と共和党候補にアドバイスを行う世論調査専門家クリスティン・マシューズ氏は指摘。トランプ大統領のコアな支持者は、候補者が大統領と距離を置くのを見たくない反面、一部の大卒共和党支持者や無党派層は「反トランプ」に票を入れたがっているからだ。

ロイター/イプソスの世論調査では、うんざりして投票に行かない可能性のある共和党支持者の数は、比較的少ないことが示されている。他の共和党支持者よりもトランプ氏をやや支持しない傾向にある、所得が7万5000ドル以上の穏健な大卒共和党支持者の登録有権者では、投票しないと答えたのは1%にも満たなかった。

より大きな脅威となるのは、共和党支持層の14%が民主党あるいは第3の政党の候補者を支持すると答えていることだ。

ネバダ州ラスベガス郊外の激戦区、第3下院選挙区に属するビジネスマン、ロバート・エリスさん(75)もその1人だ。

これまで定期的に共和党に献金してきたエリスさんだが、トランプ氏の反移民発言や敵対的なツイートにうんざりしている。そこで今回は、トランプ氏の熱烈な支持者である共和党のダニー・ターカニアン候補には投票しないという。

その代わり、民主党のスージー・リー候補に献金と票を投じる、とエリスさん。民主党が下院で勝利し、トランプ氏を監視してくれることを期待しているという。

「そうなれば、彼らは妥協せざるを得なくなる。協力しなければね」とエリスさんは語った。

前出のランス議員は、そうしたどっちつかずの中立的な立場を模索している。

過激派組織「イスラム国」との戦いや、イラン核兵器開発といった問題では大統領の強硬姿勢を支持していると、ランス議員は言う。だがすぐに、大統領と異なる例を次々と挙げ、トランプ氏が推進する税制改革法に反対する共和党下院議員12人の1人だったと強調した。同法は、ランス議員のニュージャージー州で人気の税控除を制限する。

ランス議員は、自身の選挙戦がトランプ氏に対する信任投票となるとの見方を一蹴。自身の選挙区の有権者について、「候補者や争点に基づいて」投票してきた歴史がある、と語った。

反トランプ感情が高まっている選挙区では難しいかじ取りが求められる。2016年の大統領選ではランス議員の選挙区で、民主党のヒラリー・クリントン候補が僅差で勝利したが、下院選を争った議員自身は楽勝だった。

今回の下院選では民主党候補に入れる予定だという前出のガライ氏も、大統領に反対する候補者を望んでいる。選挙区民の多くが大統領への不満を共有していると同氏は言う。ただし、多くは党の下院候補に票を投じると同氏はみている。

「『自分は共和党支持者であり、何があろうと民主党候補には絶対に投票しない』と言う人たちがいる」とガライ氏。

共和党を支持する家族に育った同氏は、2016年の大統領選ではクリントン候補に激しく反対した。だが今回、トランプ氏に対する戸惑いから、第3の政党の候補者に投票することにしたという。

今こそ「党より国を優先」し、民主党候補を支持する時だとガライ氏は言う。「異常な時には、異常な措置が必要だ」

(Peter Eisler記者、Jason Lange記者、Sharon Bernstein記者、Tim Reid記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

[ストックトン(米ニュージャージー州) 5日 ロイター]


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