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安倍「長期政権」はなぜ「安保ビジョン」をスルーしたのか

2018年10月15日(月)11時50分
辰巳由紀(米スティムソン・センター東アジア共同部長、キヤノングローバル戦略研究所主任研究員)

いかにも3選を前提としたような作業を総裁選前に始めることはためらわれたのかもしれない。森友・加計問題への対応に追われ、安全保障戦略をじっくり考える時間がなかったのかもしれない。安倍政権発足後、政策決定プロセスで果たす役割が格段に強化された国家安全保障局(NSS)が、安全保障政策上の目標そのものは5年前から劇的に変化していないと判断したとしても不思議ではない。

「見直し」の議論はゼロ

しかし、国際環境は5年前と比べて大きく変容しつつある。日本自身の安全保障政策を支える枠組みも、2014年の集団的自衛権行使をめぐる憲法解釈の変更とその後の平和安全保障法制で変化している。また、人工知能(AI)や無人機など、今後の戦いで大きな役割を果たすことになると思われる先端技術も飛躍的な進歩を遂げている。

日本は人口・経済規模の縮小、社会保障費と債務返済による国家財政の圧迫という国内問題を抱えている。同盟国アメリカがむき出しの国益を前面に出した政策を展開し始めるなか、どう中国やロシアと渡り合い、不確実性が増す朝鮮半島情勢に対応し、他の地域における安全保障や外交でプレゼンスを維持していくのか。こういった課題へのビジョンを示すためにも、国家安全保障戦略を見直すべきだったのではないだろうか。

その意味で、今回の新大綱・中期防見直し前に、国家安全保障戦略が見直しの必要の有無すらオープンに議論されることがなかったのは残念である。

※2018年10月16日号は「『儲かるエコ』の新潮流 サーキュラー・エコノミー」特集。企業は儲かり、国家財政は潤い、地球は救われる――。「サーキュラー・エコノミー」とは何か、どの程度の具体性と実力があるのか、そして既に取り組まれている20のビジネス・アイデアとは?

[2018年10月16日号掲載]

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