最新記事

日韓関係

旭日旗は「腫れ物」扱い? 自衛艦の旭日旗掲揚を韓国が自粛要請 

2018年10月3日(水)16時00分
内村コースケ(フォトジャーナリスト)

この2016年の出来事を報じた韓国・朝鮮日報は、「日本の艦船が旭日旗を掲げて済州港に入港しても、自国の国旗と軍隊旗を掲揚することが慣例の国際法からみて、韓国側がそれを制止する方法はない。しかし、韓国では報道を受け、旭日旗を掲げた日本の艦船が済州基地に入港することは認められないとする世論が沸騰した」と記している。旭日旗=戦犯旗であるという見方を盛んに煽ってきた韓国メディアも、国際法上は日本に非はないことを認めてはいるようだ。ただ、そうした「筋」よりも、世論の「感情」を優先すべきだというスタンスが主流だと言えよう。

韓国のチョン・ギョンドゥ国防部長官は1日、前者の「筋」を優先し、「国際慣例に従うほかない事案だ」と述べており(中央日報)、これ以上韓国政府が直接的に強い姿勢に出てくることはなさそうだ。一方で、冒頭の与党見解や、「韓国人への影響を考慮すべき」というイ・ナクヨン首相の発言もあり、陰に陽に日本に「自粛」を求めていることには変わりない。

"旭日旗ポリス"が世界各国の海軍に日本非難メール

旭日旗問題を巡る韓国報道では、「ソ・ギョンドク誠信女子大教授」という名前がしばしば登場する。韓国では、「旭日旗を見つけたらこの人に通報せよ」という、"旭日旗ポリス"と言うべき存在だ。今回の自衛艦旗問題でも、真っ先に動いたのがソ教授だった。聯合ニュースによれば、同教授は、9月13日に海上自衛隊に「行事に招待され参加するのはいいが、日本の帝国主義を象徴する戦犯旗を軍艦に掲げるのはあってはならないこと」「歴史をきちんと直視するならば、自ら掲揚を控えるのが基本的な礼儀」「日本が敗戦後しばし使用していなかった戦犯旗を復活させたのは、帝国主義の思想を捨てていないという証拠」というメールを送った。

日本側が要請を拒否したと見るや、ソ教授は、今度は世界45ヶ国の海軍に「日本はドイツとは違い、戦後、誠意を込めた謝罪どころか、戦犯旗を海上自衛隊の旗としてまた使用するなど破廉恥な行動を続けてきた」「ドイツは戦後、ナチスの旗の使用を法でも禁止したのに対し、日本は敗戦後しばらく使用しなかったが、また戦犯旗を復活させた。帝国主義思想を捨てられなかったという証拠」というメールを送ったという(中央日報)。

ナチス時代のドイツ旗にあしらわれた鉤(かぎ)十字(ハーケンクロイツ)は、ナチスが党のシンボルとして用いたのが始まりで、第2次世界大戦を引き起こしたナチス・ドイツを象徴するマークだ。これは、確かにソ教授らが言う"戦犯旗"と扱われており、ドイツ自身をはじめ、多くの国で使用が禁じられている。実際の掲揚を巡って問題になることも多く、最近では、アフガニスタンで任務についていたオーストラリア軍の車両が鉤十字の旗を掲げている写真が流出。10年以上前の写真にも関わらず、ターンブル現首相が謝罪する事態となった

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエルのガザ支援措置、国連事務総長「効果ないか

ワールド

記録的豪雨のUAEドバイ、道路冠水で大渋滞 フライ

ワールド

インド下院総選挙の投票開始 モディ首相が3期目入り

ビジネス

ソニーとアポロ、米パラマウント共同買収へ協議=関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中