最新記事

一帯一路

色あせる中国「一帯一路」 IMF・世界銀行の総会で批判の矢面に

2018年10月16日(火)08時40分

 10月14日、インドネシア・バリ島で週末に開催された国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会は、中国が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」への風当たりが強くなっていることを印象付けた。バリ島で12日撮影(2018年 ロイター/Johannes P. Christo)

インドネシア・バリ島で週末に開催された国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会は、中国が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」への風当たりが強くなっていることを印象付けた。

中国はこの構想をグローバル化推進の原動力と位置付けて脚光を浴びたが、保護主義台頭への不安が広がる中、輝きは褪せてきたようだ。

国際金融協会(IIF)の前会長、チャールズ・ダラーラ氏は総会で「中国はある意味で(国際貿易)体制に便乗しているとの見方が西側で広がっていると思う」と述べ、「1980年代の日本に対する西洋の見方を思い起こさせる。そっくりだ」と続けた。

こうした見方はトランプ政権に限らない。ラガルドIMF専務理事もバリ島での貿易会合で、知的財産保護や競争の確保、行き過ぎた市場支配的立場回避の重要性を訴えた。中国を名指しはしなかったが、いずれもトランプ政権がたびたび中国について指摘する課題だ。

これまでトランプ氏の関税政策について集中砲火を浴びることが多かったムニューシン米財務長官は、今回の会合では従来より自信を増し、「自由で公正な相互貿易」を求めるトランプ氏の望みがより良く理解されるようになったと指摘。さらに、「(同盟国は)中国に圧力をかけるための連合ではない。中国に関連してほぼ共通の課題に直面し、志を同じくする人々の連合だ」と強調した。

<一帯一路>

総会では、中国が期待していたと見られる方向から議論が急転換したため、中国高官らはより守勢に立たされたようだ。

一帯一路に関する世銀のパネル討論会では、この構想に加わった小国の債務の持続性や、小国が中国との交渉力を欠いていることなどについて、中国高官らが質問責めにされた。

ブルッキングス研究所のシニアフェロー、デービッド・ダラー氏はパネルで、「一帯一路プロジェクトが極めて良いものだったとしても、低所得国にとっては過剰な債務を抱える深刻なリスクがある」と指摘した。

中国側の出席者からは、国際機関がトランプ政権の関税政策は阻止できないのに、国際協調を訴える中国の構想は無視されていると不満の声も漏れた。

中国人民大学の幹部は会議の傍ら、「G20、国連、世銀、IMF、WTO(国際貿易機関)を含むすべての会議が強固で生産的なものになり、保護主義や一国主義などあらゆる誤りを抑え込んでほしい」と語った。

(Yawen Chen記者 David Lawder記者)



[ヌサドゥア(インドネシア) 14日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 非婚化する世界
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月17日号(6月10日発売)は「非婚化する世界」特集。非婚化と少子化の波がアメリカやヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中