最新記事

選挙

混迷のブラジル大統領選 最有力候補ボルソナロ、遊説中に刺され瀕死の重傷

2018年9月7日(金)15時22分

9月6日、ブラジル大統領選の世論調査で支持率トップを走る右派のボルソナロ下院議員(写真)が、南東部ミナスジェライス州での遊説中に腹部を刺された。搬送先の病院で緊急手術を受け、容体は安定しているという。8月撮影(2018年 ロイター/Diego Vara)

ブラジル大統領選の世論調査で支持率トップを走る右派のボルソナロ下院議員(63)が6日、南東部ミナスジェライス州での遊説中に腹部を刺され、搬送先の病院で緊急手術を受けた。

手術を担当した医師によると、ボルソナロ氏の傷は深く、容体は安定しているものの、退院までに少なくとも1週間、完全に回復するまでには2カ月かかる可能性があるという。

ブラジルの独立記念日となる7日は、政治団体が各地で集会を予定しており、6日の事件を契機に暴力が広がる可能性が懸念される。ボルソナロ氏のライバル候補らは今回の襲撃を非難するとともに、7日の選挙活動の中止を決めている。

今回の事件によって、すでに混迷しているブラジル大統領選の先行きは一段と不透明になった。

ボルソナロ氏は、対立候補の汚職疑惑が相次いで浮上する中、クリーンなイメージを前面に押し出し、汚職対策の強化と法と秩序の維持を訴えてきた。

ボルソナロ氏の連立政党は規模が小さく、選挙法に基づいて配分されるテレビやラジオの選挙放送の持ち時間がほとんどない。このため、同氏の選挙戦はソーシャルメディアや各地での遊説に頼るしかない。今回の事件で遊説に出られなくなれば、選挙戦は不利になりかねない。

連邦警察によると、事件の際、ボルソナロ氏には護衛の警官が付いており、犯人はその場で取り押さえられた。現在、事件当時の状況を調査しているという。

現地警察はロイターに対し、ボルソナロ氏を刺したアデリオ・ビスポ・デ・オリベイラ容疑者(40)の身柄を拘束しており、容疑者の男には精神疾患の症状がみられると明らかにした。

容疑者は2007─2014年まで左派政党のPSOL(社会主義と自由)に所属していた。

現地警察は、政治的な動機による犯行かどうかは不明としている。

ボルソナロ氏の息子はツイッターで、傷は肝臓と肺、腸に達していたと説明。「かなり出血し、病院に着いた時は瀕死の状態だった。今は安定したようだ」と語った。

テレビ映像によると、ボルソナロ氏は街頭で歓声を上げる支持者に囲まれ、支持者の肩に担ぎ上げられている時、男が近づき刃物で刺した。

[ジュイスデフォラ 6日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

FIFAがトランプ氏に「平和賞」、紛争解決の主張に

ワールド

EUとG7、ロ産原油の海上輸送禁止を検討 価格上限

ワールド

欧州「文明消滅の危機」、 EUは反民主的 トランプ

ワールド

米中が閣僚級電話会談、貿易戦争緩和への取り組み協議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中