最新記事

インドネシア

アジア大会で存在感アピールした「ジョコウィ」 現職の強みで2019年大統領選に臨む

2018年9月3日(月)20時57分
大塚智彦(PanAsiaNews)

大会を通じてインドネシア国民が一番感動したかもしれない大統領選のライバルであるウィドド大統領(左)、プラボウォ氏(右)の抱擁 Liputan6.com / YouTube

<16日間にわたって開催されたアジア大会は、開催国インドネシアが金メダル30個を獲得、総合4位となった。だが一番活躍したのはウィドド大統領かも──>

インドネシアの首都ジャカルタとスマトラ島のパレンバンで開催されていた第18回アジア大会が9月2日、幕を下ろした。大会を通じて内外に印象付けたのは開催国インドネシア選手団の大活躍で、メダル獲得数で中国、日本、韓国に次ぐ第4位の98個(金31個、銀24個、銅43個)となり東南アジア諸国連合(ASEAN)でもダントツのスポーツ大国であることを示した。

開催国のメリットを差し引いても、当初ジョコ・ウィドド大統領(通称ジョコウィ)が「金メダル16個、総合で10位以内」を目標に掲げていたことからすると、まさに「大躍進」「大健闘」といえるだろう。

このインドネシア旋風は競技場内外で熱く吹き荒れたが、競技場に足を運び、会場内の観衆とともに拍手し、音楽が流れれば手振り身振りでリズムを取り、金メダル選手とは握手、抱擁を交わし、携帯電話のセルフィー撮影にも気軽に応じるなどしていたジョコ・ウィドド大統領にとっても絶好の自己アピールの場であったといえる。

参考記事:アジア大会インドネシアはメダル4位の大健闘、2032年五輪立候補へ

8月18日の開会式は前日17日のインドネシア独立記念日でインドネシア国中が国旗を掲げ、国歌「インドネシア・ラヤ」が響き渡った熱気をそのまま引き継ぎ、会場となった「ブンカルノ競技場」は冒頭から異常な興奮に包まれていた。

そこで会場内に流れたのはジョコ・ウィドド大統領が開会式会場に向かうためにボゴールの大統領宮殿を出る車列の映像だった。車列は高速道路を出てジャカルタ市内に入ったところで渋滞に遭遇。式に遅れては一大事と大統領はナンバー「RI・1」の専用車を下り、傍らの大統領警護隊のバイクにまたがり、ヘルメット姿で渋滞を走り抜け、競技場にバイクで到着(ここまでは一部を除きスタントマン)。地下駐車場でヘルメットを脱ぐと大統領本人が現れ、エレベーターで会場に登場する──というドラマティックな演出で、スタジアム内の観衆、生中継でテレビを見る国民の興奮は最高潮に達した。ロンドンオリンピック(2012年)の開会式でエリザベス女王と007が演じたパフォーマンスにも劣らない心憎い演出でインドネシア人の愛国心に火をつけた。

こうした幕を開けた大会が進むにつれ、各競技でインドネシア人選手の活躍が連日、地元紙、地元テレビで伝えられるとじっとしていられなくなったのは庶民派のジョコ・ウィドド大統領も同じで公式日程の合間をぬって何度となく競技会場を訪れ、観客とともに選手を応援する姿が報じられた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米防衛企業20社などに制裁 台湾への武器売却

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25

ビジネス

タイ中銀、バーツの変動抑制へ「大規模介入」 資本流

ワールド

防衛省、川重を2カ月半指名停止 潜水艦エンジンで検
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中