最新記事

中国外交

孔子学院で進める中国共産党の対米「洗脳」大作戦

CHINA AID HAS STRINGS ATTACHED

2018年7月27日(金)18時00分
ベサニー・アレン・イブラヒミアン(フォーリン・ポリシー誌記者)

米政界では急増する孔子学院を警戒する声が高まっている(写真はイギリスの孔子学院のイベントに出席した習近平、2015年10月) Peter Nicholls-REUTERS

<共産党が中国の宣伝機関として公認する孔子学院――文化教育の看板の陰で中国的価値観への洗脳が進む>

私の経歴から「台湾」が抹消された。

先日、私は米ジョージア州のサバナ州立大学のジャーナリズム・マスコミュニケーション学部から表彰を受け、基調講演に招待された。大学に提出した経歴には取材経験のある場所として台湾の名前も挙げたが、当日配布された資料からは削除されていた。

くだんの表彰は75年から実施されているが、ここ数年は予算が厳しく、市外から講演者を招待する費用にも窮していた。そこでスポンサーに名乗り出たのが、4年前に同大学に開設された孔子学院だ。

孔子学院は中国政府が国外の教育機関と提携して設立している公的機関で、中国語や中国文化の教育と宣伝を目的とする。04年から設立が始まり、現在世界各地に500カ所以上、アメリカでは100以上の大学内にある。

アメリカの多くの大学は資金不足に直面しており、気前のいい後援者に頼らざるを得ない。そして中国は、特に孔子学院のグローバルなネットワークを通じて、教育機関に喜んで資金を提供している。ただし、学術的な活動が中国共産党の意に反する問題に触れると、厄介なことになりかねない。

私は同大学に孔子学院が関与していることは知っていたが、偏見にとらわれたくなかったので招待を受け、講演の謝礼は非営利団体のジャーナリスト保護委員会に寄付することにした。

そして、ジャーナリズムを学ぶ学生たちに、4年前から追い掛けているテーマについて――香港の民主化運動、ウイグル人とチベット人に対する中国政府の弾圧、習近平(シー・チンピン)国家主席によるメディアとインターネットの厳しい取り締まりについて語った。

私の講演を聞いて不愉快になった聴衆が、少なくとも1人いた。サバナ州立大学の孔子学院の共同代表を務める羅其娟(ルオ・チーチュアン)だ。

講演が終わると、羅は私に中国語でお説教を始めた。なぜ中国を批判するのか。学生には中国について、いい印象を与えるべきだ。習が中国のために大いに尽くしていることや、汚職撲滅運動の成果を知らないのか。

「あなたは現在の状況を知らない。さまざまなことが良くなっている」もちろん、実際はその反対だ。習は中国社会の徹底した弾圧を指揮している。人権派弁護士が投獄され、内陸部の山奥までハイテクの監視システムを張り巡らし、ネットの検閲を強化して、メディアを締め付け、香港で約束した普通選挙は有名無実化している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元カレ「超スター歌手」に激似で「もしや父親は...」と話題に

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中