最新記事

韓国事情

安全不感症が蔓延する韓国で、在韓邦人の安否を確認する訓練が行われた

2018年7月3日(火)18時20分
佐々木和義

ソウルで行われた米韓軍事演習と、周辺でその写真を撮る人々(2017年) Kim Hong-Ji-REUTERS

<韓国では、セウォル号沈没事故以降、安全対策への関心が大きくなったが安全不感症ともいえる事態も。そんな中、在韓邦人の安否を確認する訓練が行われた>

韓国内で緊急事態が発生したときに備えて、在韓邦人の安否を確認する緊急連絡訓練が2018年6月19日に実施された。日本大使館が日本人会会員の携帯電話にメッセージを送り、受信者は「HELP、BUJI」のいずれかを返信する。

日本大使館によると対象者1504人に対して送達数1375通、返信は1038人で75.5%の返信率だった。

sasaki0703b.jpg

大阪北部地震でも注目された日本政府の対応

2018年6月18日に大阪北部で震度6を記録する地震が発生した際、韓国のマスコミは日本政府等の対応を大きく報道している。

中央日報は、日本社会は歯車のように組織的で一糸乱れぬ対応だったとして、NHKや民間放送が地震の発生直後に災害放送体制に入り、政府の対策室は地震発生からわずか2分後の8時に稼動。発生から1時間後の8時58分には安倍首相が対策を明らかにし、国土交通省も地震発生から1時間以内に被害状況や復旧目処をまとめたなど各機関の素早い対応を伝えている。

韓国南東部の慶州市で、2016年9月12日午後8時32分にマグニチュード5.8の地震が発生したとき、市民に注意を呼びかける緊急通報は発生から9分後だった。

国民安全処がSNSで注意を呼びかけたのも地震発生の50分後で、同処ホームページは2時間以上にわたってつながりにくい状況が続くなど、国民は不安の一夜を過ごした。正確な情報がなく、北朝鮮の核実験というデマすら流布している。

こうしたこともあり、日本での地震への対応に大きな関心があるのだろう。

ヒューマンエラーと政権崩壊

こうした安全への関心が大きくなったきっかけは、なんといっても2014年4月16日、仁川港から済州島に向かう大型旅客船セウォル号の沈没だ。修学旅行生250人を含む295人が死亡、9人が行方不明となった韓国史上最大の海難事故である。

不適切な改造に加えて、救命ボートの不備など安全対策は不十分で、船長はじめ乗組員の大半が早々に退避している。乗客への避難誘導は行われず、退避を促す船内アナウンスは船が傾いてから1時間半後だった。教育庁が事故発生の4時間半後に生徒と教員は全員無事と誤った発表を行うなど政府機関の対応も混乱を極めた。

事故を受けて、同年11月に朴前大統領は国民安全処を創設したが、慶州地震時の対応に、基本的な仕事さえできない無用の長物と批判され、朴前大統領ははじめて弾劾を受け罷免されるに至った。直接的には友人の国政介入と贈賄疑惑だが、セウォル号沈没事故の対応と安全対策への不信が根底にあった。

この国民安全処は文在寅(ムン・ジェイン)政権発足直後に解散している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米東部4州の知事、洋上風力発電事業停止の撤回求める

ワールド

24年の羽田衝突事故、運輸安全委が異例の2回目経過

ビジネス

エヌビディア、新興AI半導体が技術供与 推論分野強

ワールド

ホンジュラス大統領選、トランプ氏支持のアスフラ氏勝
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中