最新記事

北朝鮮

トランプは非核化で金正恩に騙されている、米情報機関が分析

2018年7月2日(月)18時45分
エリオット・ハノン

歴史的な米朝首脳会談でトランプの話を聞く金正日(6月12日、シンガポールのセントーサ島で) Jonathan Ernst-REUTERS

<史上初の米朝首脳会談後に「北朝鮮の核の脅威はなくなった」と豪語したトランプのメンツを潰す新たな疑惑が浮上した>

シンガポールで金正恩朝鮮労働党委員長と史上初の米朝首脳会談から一夜明けた6月13日、アメリカの最高の交渉役を自負するドナルド・トランプ米大統領は、立て続けにツイートを投稿し、成果を強調した。

(今シンガポールからの帰りだ。本当に素晴らしい会談だった。北朝鮮の非核化に向けて重大な成果があった。人質はすでに帰国し、今後は米兵の遺骨も家族のもとに戻ってくる。ミサイルの発射や核開発の研究もなくなり、核実験場は閉鎖されている...)

(今着陸した。長旅だったが、私が大統領に就任した日と比べて誰もがずっと安心できるようになった。北朝鮮の核の脅威はなくなった。金正恩との会談は興味深く、とても前向きな経験だった。北朝鮮には素晴らしい可能性がある!)


ところが6月29日、米情報機関の衝撃的な分析が明らかになった。シンガポールで金と交わした合意は、現実にはトランプが吹聴したようなものとは違うというのだ。米NBCニュースによれば、米情報機関は北朝鮮が核兵器の原料となる高濃縮ウランを増産し、秘密の核関連施設を維持している、と結論付けた。

この問題に詳しい十数人の米政府関係者によれば、北朝鮮が秘密の核関連施設で原料の生産を続けているのは、トランプ政権からさまざまな譲歩を引き出す一方、アメリカとの交渉に信じられないほどの威力を発揮した核保有は続ける北朝鮮の策略の一環だという。現にトランプは、北朝鮮の求めに応じて米韓合同軍事演習を中止した。この決断も、具体的な見返りなしに重大な譲歩をし過ぎたと批判されている。

北朝鮮に騙された

(私の就任前、人々はアメリカが北朝鮮との戦争に向かうと考えていた。オバマ前大統領は北朝鮮が最大かつ最も危険な課題と言っていた。もはやそうではない。今夜からよく眠れるぞ!)


「ここ数か月、米朝両国が外交交渉を進めている間にも、北朝鮮は高濃縮ウランの生産を増やしていたことになる」、と5人の政府関係者が情報機関の最新の分析を引用しつつNBCに語った。北朝鮮はミサイルの発射や核実験を停止したものの、「核兵器の備蓄を減らし、生産を停止したという証拠はない」、と分析の報告を受けた別の政府当局者は語った。

米ワシントンを拠点とする北朝鮮分析サイト「38ノース」も6月26日、21日に撮影された商業衛星写真に基づき、北朝鮮寧辺の核施設でインフラ整備が速いペースで進んでいる、との分析を発表したばかりだ。

「北朝鮮がアメリカを騙そうとしている明白な証拠がある」、と先の政府関係者の一人は言った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中