最新記事

サプライチェーン

電子タバコからプリウスまで トランプ貿易戦争、米消費者に影響不可避

2018年6月28日(木)16時50分

6月25日、トランプ米政権による中国製品に対する輸入関税は、米国の消費者を直撃しない製品を標的にしているが、実際にはグーグル傘下「ネスト」のサーモスタット(写真)やロックバンドが使う音響効果機器など、意外な製品も含まれるようだ。写真は中国・深センの電子タバコ工場。2014年撮影(2018年 ロイター/Tyrone Siu)

トランプ米政権による中国製品に対する輸入関税は、米国の消費者を直撃しないようサプライチェーン上の製品を標的にしているが、実際にはグーグル傘下「ネスト」のサーモスタットやロックバンドが使う音響効果機器など、意外な製品も含まれることになりそうだ。

米国は最大4500億ドルの中国製品に輸入関税を課す可能性をちらつかせており、7月6日に第1弾として340億ドル分への関税適用を開始する。

第1弾は慎重に消費者向け製品を避けているが、ロイターの分析によると一部には影響が及ぶ。4500億ドル規模まで広げれば、ほぼすべての輸入品が対象になるのを避けられない。米国の中国からの輸入額は昨年5060億ドルだった。

米通商代表部(USTR)が標的としている1102種類の商品をロイターが分析したところ、当初から段階的に25%の関税を課せられる商品のうち「消費財」はわずか1%だった。経済協力開発機構(OECD)の分類で見ると、大半の商品は「資本財」もしくは「中間財」だ。

この背景には、企業にサプライチェーンの中国外への移転や、コストの差を埋めるための効率化努力を促す米政府の狙いがある。しかし業界指導者らは、それでも最終的には米国の消費者に害が及ぶと見ている。

業界で使われている分類に従うと、意外な商品が関税の影響を受けることになる。例えばネストのサーモスタットは中国で組み立てられ、米国でグーグルの親会社アルファベットが250ドル程度で販売しているが、「資本財」に分類されるため関税の対象となる。

中国製電子たばこ機器や、ロックバンドがギターの音色をゆがませるためなどに使うエフェクターもこの分類に入る見通し。前者の輸入額は年3億ドル、後者は1600万ドル規模だ。

OECDの分類では、いずれも輸入関税第2弾(160億ドル)の対象である「さまざまな電子機器」に属する。

中国で製造されている米ゼネラル・モーターズ(GM)のスポーツタイプ多目的車(SUV)「ビュイック・エンビジョン」や、中国の吉利汽車(ジーリー)<0175.HK>傘下のボルボ車も、中国で製造されている分は輸入関税の対象となる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、年間では2017年以来の大

ワールド

ゼレンスキー氏「ぜい弱な和平合意に署名せず」、新年

ワールド

原油先物、25年は約20%下落 供給過剰巡る懸念で

ワールド

中国、牛肉輸入にセーフガード設定 国内産業保護狙い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中