最新記事

韓国事情

韓国の未婚の母が子を育てられない厳しい事情

2018年6月27日(水)18時30分
佐々木和義

(写真はイメージ) hyejin kang-iStock

<韓国の未婚の母たちが養子か遺棄かを迫られるような厳しい現状から、中絶容認を求める声が多くなっている>

韓国で「堕胎罪」廃止の論議が高まっている。政府系シンクタンク韓国女性政策研究院が2018年4月に発表した調査で、16歳から44歳の女性2006人中77.3%が堕胎罪を廃止すべきと回答し、維持すべきと答えた人でも75.7%が妊娠中絶の許可基準拡大に賛同している(聯合ニュース)。

母子保健法は、親に遺伝学的あるいは伝染性の疾患がある場合や、法律上で婚姻できない親族間で妊娠した場合、性的暴行により妊娠した場合などに限り妊娠中絶を認めている。

2010年に政府が行った実態調査によると、妊娠中絶の年間推定件数は16万9000件で、合法的な中絶は6%だった。

設備の整った病院は遵法の観点から中絶手術を断るため、安心して手術を行う病院を見つけることができずに出産を迎えるケースは多い。また未婚の母や経済的な事由で子供が育てられない母親が、出産と同時に養子に出し、あるいは遺棄する例が後を絶たない。保健福祉部が集計した2015年から17年の養子縁組は2800人で、93%が未婚の母、4%が遺棄児童だった。

望まない妊娠をした女性の子育ては難しい。経済的な事情に加えて、未婚の母子は社会的偏見から不利益を受ける。夫婦別姓を採用する父系社会の韓国では、子は父親の姓を名乗るのが一般的で、父の姓を名乗ることができない子は就職や結婚にも支障がでる。そうしたこともあり、未婚の母は中絶か、生まれた子どもを手放すことを選択せざるをえない現実がある。

2011年、入養特例法が改正されたが...

1961年に朝鮮戦争孤児を国外に養子として出すことを想定した「孤児入養特例法」が制定され、1976年には国内の養子縁組の活性化を目指す「入養特例法」(※入養=養子縁組)が制定されたが、1958年から2017年の保健福祉部が把握している国外養子は16万7千人に達している。67.2%の11万2513人が米国で、フランス、スウェーデン、フィンランドと続いている。

2011年、「孤児輸出国」の汚名を返上すべく入養特例法が改正され、翌12年8月から施行されている。母親は出産から7日間は養子の相談ができず、養子の依頼を受けた養子縁組機関は、5か月間は国内で養親を探さなければならない。5か月経っても養親を見つけられない場合のみ、国外養子が認められることとなったが、2017年に成立した養子縁組の46%は国外養子だった。

国内養子縁組は裁判所の許可制で、同法にもとづく養子縁組では従前の親子関係は断絶し、養親の実子とみなされる。

養子縁組機関は、法改正前は独自の判断でマッチングしていたが、改正後は裁判所と新たに設置された中央入養院へ提出する書類作成が義務付けられ、アフターフォローや記録の永久保存などが課せられることになった。国からの援助は国内養子縁組1件確定ごとに270万ウォン(約27万円)で、養親からの徴収はできず、国外養子が成立した際の補助金はない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、9000件減の20.2万件 一

ビジネス

米国株式市場・序盤=急反落、ダウ650ドル安 イラ

ビジネス

エネ市場の緊張が金融安定に及ぼす影響を懸念=イタリ

ワールド

ゴールドマンとシティ、パリの従業員を在宅勤務 爆破
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 3
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経済政策と石油危機が奏でる「最悪なハーモニー」
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 6
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 7
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 8
    カンヌ映画祭最高賞『シンプル・アクシデント』独占…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    破産申請の理由の4割以上が「関税コスト」...トラン…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中