最新記事

中国

サッカー選手もアイドルも ウイグル絶望収容所行きになった著名人たち

2018年6月15日(金)17時15分
水谷尚子(中国現代史研究者)

サッカー選手や音楽家が

人気のあったウイグル人サッカー選手エリパン・ヘズムジャンの失踪は、漢人の熱烈なファンたちがソーシャルメディア上で告発して発覚した。今年19歳の彼は15歳から中国のサッカーチームでプレーをし、失踪前は中国スーパーリーグの江蘇省チームに所属していた。

今年2月末頃に里帰りしたが、南京で3月に行われた試合に姿がなかったことを心配する書き込みが相次いだ。RFAは4月、彼の地元ドルビリジン県へ電話取材をし、同県警察署職員の証言で2月頃に強制収容所に送られたことが判明した。

所属チームの主戦力として1~2月にかけて、スペインやアラブ首長国連邦で試合に出ていたが、「外国に行ったこと」を理由に、県中心部から約10キロ離れたトゥルグン村の強制収容施設に送られたという。そこにはウイグル人約1000人が収容されている。

ウイグル人の幅広い年齢層に愛されている民謡歌手でドゥッタル奏者のアブドゥレヒム・ヘイット(56)は、昨年4月に公安警察に連行されてから行方不明になった。

アブドゥレヒムは北京の中央民族歌舞団や新疆ウイグル自治区歌舞団で活躍し、数多くのアルバムも発表した。ウイグルの民族文化に誇りを持ち、前を向いて生きていこうと呼びかけるメッセージ性の高い曲が多いこと、特にウイグル人に広く知られる歌謡「お父さんたち」の歌詞が問題視されたという。

若くハンサムなポップス歌手も収監されている。若い女性を中心に熱狂的人気を誇るアブラジャン・アユップ(34)は、「ウイグルのジャスティン・ビーバー」と欧米誌に紹介されたこともある。ウイグル語のみならず英語や中国語でも歌っていたから漢人にも人気だった。今年2月に上海でコンサートを行った2日後、ウルムチで拘束された。昨年マレーシアを訪問したことや、民族や故郷への愛を歌っていたことなどが原因とささやかれている。

日本と縁のある著名人も

ウイグル文学者で新疆師範大学教授でもあるアブドゥカディリ・ジャラリディン(54)は今年1月にウルムチ市国家安全局に拘束された。アブドゥカディリはカシュガル師範学院を卒業後、ウイグル文学者の道を歩んだ。彼は00年代初頭、石川県に数カ月滞在したことがあり、その体験を記した本の一部がウイグル語教科書に引用された。ウルムチ市の中で最大級と言われている収容施設に収監されているとされる。

webuyghur180615-3.jpg

アブドゥカディリ・ジャラリディンは新疆師範大学教授で、人気作家でもあった。文体が美しいと朗読CDも発売された

自治区最大の教育機関である新疆大学学長を10年から務めていたタシポラット・ティップ教授(60)は昨年3月に解任され、それ以降は当局に拘束されていると、今年2月にRFAの取材に答えた大学関係者が明かした。新疆大学を卒業後、東京理科大学で理学博士号を取得。研究プロジェクトの成果から中国教育省に賞を与えられたことも多数あり、新疆では著名な学者だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中閣僚協議2日目、TikTok巡り協議継続 安保

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習

ビジネス

英米、原子力協力協定に署名へ トランプ氏訪英にあわ

ビジネス

中国、2025年の自動車販売目標3230万台 業界
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中