最新記事

中国経済

苦境の中国鉄鋼業 東南アジアから新天地求めアフリカ・南米に熱視線

2018年6月11日(月)12時49分

6月6日、中国にとって最大の鉄鋼輸出先である東南アジア向けの出荷量が2ケタの減少に沈む中、米国の新たな関税措置により一部の輸出先市場が完全に消滅する恐れが浮上している。中国・張家港の鉄鋼会社で4月撮影(2018年 ロイター/Muyu Xu)

中国にとって最大の鉄鋼輸出先である東南アジア向けの出荷量が2ケタの減少に沈む中、米国の新たな関税措置により一部の輸出先市場が完全に消滅する恐れが浮上している。苦境に立つ中国の鉄鋼メーカーは、アフリカや南米で新たな輸出先を探している。

世界最大の鉄鋼生産国であり、最大の消費国、最大の輸出国でもある中国にとって、輸出先の選択肢が狭まっている。米政府は先週、同国への主要鉄鋼輸出国であるカナダとメキシコ、欧州連合(EU)に対して大幅な輸入関税を課した。これら相手国は、対抗措置を取る構えだ。

米国が3月、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限をグローバルで発動したそもそもの目的は、中国製鉄鋼の輸入削減だ。その一部は第三国を経由して米国に輸入されていると米製鉄会社は主張している。

米商務省は先週、ベトナムから輸入される一部鉄鋼製品が中国産だとして、重い輸入関税措置を発表。ベトナムは、中国にとり韓国に次ぐ2番目に大きい鉄鋼輸出先であり、ベトナムに倉庫を持つ中国の製鉄会社にとって主要な販売先だ。

米国向け輸出品が懲罰関税の対象となる事態を避けるため、ベトナムは国内鉄鋼企業が、中国からの製鉄購入をやめる可能性があると指摘されている。

「中国メーカーの輸出機会がますます限定されつつあることが、一層明らかになっている。これは世界各地で導入された既存の通商法制の影響だ」と語るのは英国の鉄鋼コンサルタント会社MEPSインターナショナルの クリス・ジャクソン氏。

中国の鉄鋼輸出は4月、過去8カ月で最高の水準に達したが、今年1─4月の出荷量は2割下落した。ただ金額ベースでは2・5%の下落にとどまっている。

最大の輸出先であるベトナムや韓国向けが昨年以降2ケタの勢いで減少。ロシアなど他の輸出国との競争激化を反映している。

タイやベトナム、インドネシアやマレーシアなど東南アジアの輸入国が、中国製鉄鋼に反ダンピング税を課したことも、中国の輸出を減退させている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、台湾への武器売却承認 ハイマースなど過去最大の

ビジネス

今回会合での日銀利上げの可能性、高いと考えている=

ワールド

中国、「ベネズエラへの一方的圧力に反対」 外相が電

ワールド

中国、海南島で自由貿易実験開始 中堅国並み1130
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中