最新記事

電子政府

日本人は「マイナンバー活用」で損してる? 北欧の「デジタルトランスフォーメーション」に学べ

2018年5月9日(水)18時55分
砂田 薫(国際大学GLOCOM主幹研究員)※東洋経済オンラインより転載

YouTubeチャンネルまで作って政府はマイナンバー制度の普及にやっきだが…… 「マイナンバー制度【内閣官房・内閣府】公式YouTube動画チャンネル」動画より

IoT(Internet of Things)、人工知能(AI)、ロボットが普及する中、社会のあり方が根本から変化しつつある。そこで日本政府は、デジタルデータの活用を前提とした人間中心のスマート社会として「ソサエティ5.0」という概念を提唱した。

「ソサエティ5.0」の実現に向け、今後は、個別企業にとどまらず、産業や社会全体での利益を高めるために、データ連携・共有の仕組みを変革することが重要な課題になるだろう。しかし、日本はデジタル社会の構築で世界から後れを取る。

マイナンバーでかえって負担増

日本は2016年、デジタル社会の実現に向け、マイナンバー制度を創設した。これにより行政事務や手続きを効率化し、間接コストを削減できれば、教育や医療などの直接的なサービスへ予算を振り向けられると考えられる。だが現実は、書類の郵送で紙の処理の増加を招き、個人や企業の負担を増やしている。

個人や企業がより創造的な活動や仕事にエネルギーを注げるようにするためにも、マイナンバーを活用した効率性の追求は重要である。また、同様の観点から、自治体ごとに個別ばらばらに構築されてきたITシステムの共通化に向けた動きも加速させるべきだろう。ITによる効率化を目指す時代は終わったという言説もあるが、日本においてはまだまだやるべきことがある。

個別の企業や部門に最適化された固有のITシステムはすでに時代遅れとなりつつある。「ソサエティ5.0」では、組織を超えたデータの連携・共有がイノベーションの源泉となるので、それを促すようなIT活用がきわめて重要になる。

マイナンバーの活用とイノベーションは結び付かないように見えて、実はとても深い関係にある。北欧の取り組みを参照しながら見ていこう。


セキュリティーも万全という広報動画だが、実際のマイナンバーカードは1度も画面に登場しない── マイナンバー制度【内閣官房・内閣府】公式YouTube動画チャンネル / YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中