最新記事

監視社会

要注意、中国が外国人スパイの通報サイトを開設

2018年4月17日(火)16時25分
デービッド・ブレナン

中国政府が立ち上げた外国人スパイの通報サイト「国家安全機関(国家安全部)挙報受理平台」

<国家転覆の動きを警戒する中国の通報・監視システムは、人々の暮らしを細部まで支配するツールとして世界最先端だ>

中国政府は4月15日、外国人スパイや分離独立主義者と疑われる者を一般市民が通報できるウェブサイトを新たに開設した。

香港英字紙サウスチャイナ・ モーニングポストによれば、国家安全省が開設したこの通報サイトでは、「社会主義体制の敵」を通報した市民には報奨金が払われるという。

英語と中国語で利用が可能なこのウェブサイト(www.12339.gov.cn)は、4月15日の「国家安全教育日(National Security Education Day)」に合わせて開設された。

サイト上には、通報可能な犯罪が事細かリストアップされている。他国との共謀や、「国家分断」の計画、「噂や中傷による国家転覆の扇動」などだ。

リストにはさらに、「宗教を通じて国家の安全を脅かす活動に携わった」者や、機密情報や「国家機密」を入手する目的で役人や軍人を買収しようとした者なども、通報の対象として挙げられている。

通報する際はまず、該当する犯罪のカテゴリーを選択する。暴力、テロ、スパイ、機密情報の盗難や漏洩、分離独立、国家転覆などの選択肢がある。

次は、通報の緊急性を「低・中・高」から選び、通報内容を裏づける資料を添付する。証拠をねつ造したり事実をねじ曲げたりした通報者には、処罰があるとの警告もある。通報者の身元は確実に秘匿される。

外国人との恋愛はスパイ行為?

サイトには政府の対諜報活動に大きく貢献した人には「報奨金」が支払われると書かれているが、具体的な額は示されていない。ロイター通信によれば、北京市の国家安全局は2017年4月、スパイに関する情報を提供した市民には1万元から50万元(約17万円から852万円)の報奨金を与えると発表した。

国家安全局はまた、「a friend with a mask(仮面をかぶった友だち)」と題した漫画を公開し、疑わしいと考えられる行動を具体的に紹介している。AFP通信によるとこの漫画は、中国で労働者の権利推進活動を行う非政府組織の外国人職員が、集会や労働者デモを組織するために、中国の役人にわいろを渡すという筋。漫画は、抗議行動は違法であると説明し、その外国人が通報される様子を描く。

中国政府は2016年にも同様の漫画を公開し、外国人と恋愛関係にならないよう警告している。外国が中国の国家機密を得るためのやり口だというのだ。

中国は、監視能力を強化するため最新技術を積極的に導入している。最新の情報技術を国家の治安システムに組み入れる「金盾工程(ゴールデン・シールド・プロジェクト)」を推進しているのだ。この大規模プロジェクトは、技術進歩を取り入れて治安システムの支配力と反応速度を向上させることを目指している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

半導体への関税率、EUに「劣後しないこと」を今回の

ワールド

米政権、ハーバード大の特許権没収も 義務違反と主張

ビジネス

中国CPI、7月は前年比横ばい PPI予想より大幅

ワールド

米ロ首脳、15日にアラスカで会談 ウクライナ戦争終
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 2
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何か?...「うつ病」との関係から予防策まで
  • 3
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トップ5に入っている国はどこ?
  • 4
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 5
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 8
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 9
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 10
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 9
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中