最新記事

米軍事

トランプ、貿易赤字を理由に在韓米軍撤退を示唆? 国防総省が慌てて火消し

2018年3月16日(金)18時44分
ニューズウィークウェブ編集部

昨年11月、在韓米軍のハンフリー基地を訪ねたトランプ REUTERS/Jonathan Ernst

<今後の朝鮮半島情勢の鍵となる米朝首脳会談を決めたトランプ。一方で韓国とは貿易問題を抱えており、この通商交渉の行方によっては在韓米軍の撤退を言い出しかねない>

トランプは14日ミズーリ州で開かれた政治資金パーティーで演説し、外国との貿易赤字についての不満を語ったという。

ワシントン・ポストによると、このパーティーでトランプは、「韓国は経済成長を成し遂げたのにもかかわらず、古い貿易の規定を利用している。私たちは韓国との貿易で非常に大きな赤字を抱えており、一方では韓国を防衛している。貿易でお金を失い、軍事費でもお金を失っているわけだ」と語り、さらに「今、韓国と北朝鮮の間には在韓米軍3万2000人がいる。何がおきるか様子を見よう」と、米韓FTA改訂交渉が思い通りに行かない場合、在韓米軍の撤退もあり得ることを示唆した。

さらにトランプはこのパーティーで、日本、中国、EUなどの貿易相手国についても米国が損害を被っているとも語り、日本については「米国の自動車業界が日本に参入できないように小細工を労している」と非難した。

この政治資金パーティーが開かれたミズーリ州は、遺伝子組み換えの種苗を販売するモンサント社があり、牛肉、豚肉、大豆などの農牧業も盛んな地域。また政治的に共和、民主の両党が拮抗しており、大統領選の行方を占ううえで重要な州と言われる。

トランプとしては11月の中間選挙を控えて、支援者に向けてのリップサービスから、貿易赤字削減への取り組みをアピールするため、「在韓米軍撤退」というカードをチラ見せしたのかもしれない。

韓国大使館の抗議で、国防総省が火消し

ところが、このトランプの発言を報道を知ったワシントンの韓国大使館が激怒。国防総省、国務省などに抗議の電話を入れた。このためホワイトハウスや国防総省は大統領の発言の火消しに追われた。

ダナ・ホワイト国防総省報道官は、「私たちの関心事は米韓関係がかつてないほど強力だということ。ワシントンとソウルの間にはまったく隙間はなく、私たちは今後も彼らを支援し、彼らと共にする」と話した。

また、ホワイトハウスの消息筋は、「トランプ大統領は在韓米軍の撤収について発言したことはない。ただ、大統領は米国の労働者たちの利益のため、米韓日の貿易関係を向上させるために専念している」と語ったという。

とはいえ、米韓FTA交渉は昨年夏から断続的に行われているが未だ合意点が見いだせないままだ。5月までに行われるという米朝首脳会談で、トランプが北朝鮮側の核廃棄への代償として在韓米軍の撤退を口に出さないという保証はない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

植田総裁、21日から米国出張 ジャクソンホール会議

ビジネス

中国のPEセカンダリー取引、好調続く見通し 上期は

ワールド

マスク氏が第3政党計画にブレーキと報道、当人は否定

ワールド

訪日外国人、4.4%増の340万人 7月として過去
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 10
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中