最新記事

保護主義

トランプ、鉄鋼に25%・アルミに10%の関税導入 来週発表

2018年3月2日(金)11時20分

3月1日、トランプ米大統領は鉄鋼輸入品に対し25%、アルミニウム製品には10%の関税を課す方針を来週発表すると明らかにした。写真はホワイトハウスで同日撮影(2018年 ロイター/Kevin Lamarque)

トランプ米大統領は1日、鉄鋼輸入品に対し25%、アルミニウム製品には10%の関税を課す方針を来週発表することを明らかにした。中国、欧州、カナダなど主要貿易相手国が報復措置に出る恐れや、国内株式相場が大幅安となる可能性がある。

トランプ大統領は来週に正式発表すると述べたが、ホワイトハウスの当局者はその後、一部の詳細については調整が必要だとの見方を示した。

大統領は関税により国内雇用が保護されると考えており、「鉄鋼とアルミニウム産業をわが国の手に取り戻すだろう」と述べた。だがエコノミストの多くは、自動車や石油産業など鉄鋼やアルミニウムの消費者が価格上昇の影響を受け、雇用はかえって減るとみている。

関税に関する報道で、国内の鉄鋼やアルミ生産業者の株価は上昇した。ただ、価格上昇への懸念が投資家心理を冷やした。

ある関係筋によると、ホワイトハウスで夜に行われた議論は、政権内で見解が目まぐるしく変わり「大混乱」していたもようだ。

共和党議員だけでなく、投入原価の上昇が見込まれる自動車や石油産業からも強い批判が出ている。大きな懸念は、鉄鋼輸出国からの報復により米国の農産物輸出が大打撃を受ける恐れがあることだ。

上院農業委員長を務めるパット・ロバーツ議員は「関税を課すたびに報復はある。農産物は最優先ターゲットであり、農業経済にとってはひどい逆効果につながる」と話した。

中国は既に米国産大豆の輸入を減らすと示唆しており、欧州連合(EU)も同様の措置を検討中。中国からは通商問題に関する協議のため、経済顧問である劉鶴氏がワシントンを訪れている。

今回の措置で中国が直接打撃を受ける見通しは小さい。米国の鉄鋼需要に対してはカナダが16%を供給している一方、中国の比率は2%に過ぎず、世界最大級の輸出国であるブラジルや韓国にははるかに及ばないからだ。

カナダのフリーランド国際貿易相は発表文で「カナダ産の鉄鋼やアルミ製品に制限がかかるならば、カナダは貿易における利益と労働者を守るため対抗措置を取らねばならなくなるだろう」と強いトーンで表明した。

ブラジルの産業省は、独自もしくは他国と連携した措置を検討すると明らかにした。大手鉄鋼会社であるナショナル製鉄(CSN)とウジミナスの株式は売られ、それぞれ4.4%安、4.2%安となった。

米政府は北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉でカナダやメキシコと既に協議中。数カ月経った今も有意義な進展はみられない。ホワイトハウスのサンダース報道官は、関税免除となる国はあるかとの質問に対し、来週の正式発表まで詳細には触れないと述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米最高裁、クックFRB理事解任訴訟で来年1月21日

ビジネス

インドCPI、10月は過去最低の+0.25%に縮小

ビジネス

カナダ中銀、物価上昇率の振れ幅考慮し情勢判断=議事

ワールド

FRB議長に選ばれなくても現職にとどまる=米NEC
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 3
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働力を無駄遣いする不思議の国ニッポン
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中