最新記事

銃乱射

フロリダ州銃乱射、悪いのは銃かメンタルか

2018年2月16日(金)16時45分
ケイト・シェリダン

2月14日、フロリダ州の高校で銃を乱射し17人を殺害したニコラス・クルーズ容疑者 Broward County Sheriff/REUTERS

<また繰り返された銃乱射事件、トランプや共和党重鎮はこれを「心の病」のせいにして銃には触れずじまい。極端な精神行動の専門家の意見は>

米東南部フロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で生徒ら17人が死亡した銃乱射事件の翌2月16日、ドナルド・トランプ米大統領は「精神疾患という難しい問題」に取り組まなければならないと言った。容疑者の元生徒は事件の1年以上前に精神科の治療を受けていた時期があった、と米紙ワシントン・ポストは報じたが、問題はそこなのか。

今回の事件は、2012年12月のコネチカット州の小学校で起きた乱射事件で児童ら26人が殺害されて以来、学校での発砲事件としては最悪の死者数となった。銃乱射による惨事が相次ぐアメリカでは、再発防止に必要なのは銃規制なのか、精神疾患対策なのかで、意見が対立している。トランプは乱射事件の直後の声明で犯人の精神疾患を問題にしながら、銃の問題には一切触れなかった。こうした姿勢は不適切だ、と多くの人が疑問視している。

極端な精神行動を長年研究してきた米テンプル大学の心理学者フランク・ファーリーに問題点を聞いた。

──銃乱射事件を起こすような人間は、たいてい皆精神疾患を抱えている、と言っていいのだろうか?

精神疾患と認められたのは、乱射事件を起こした容疑者全体の4~5%に過ぎない。米精神医学会のうつ病診断基準(DSM-V)に基づいたもっとも信頼できる統計だ。

銃乱射は錯乱した者がやること?

しかし私自身は違う見方をしている。DSM-Vにも問題があるし、17人を無差別に殺戮した時点で、犯人が精神的な問題を抱えていたのは明白だ。無差別殺人に及んだという事実が、犯人の感情や道徳的な規準の異常さ、精神的な錯乱状態を示している。乱射事件の犯人は大抵、最終的に死刑か終身刑になる。銃乱射事件を起こせば極刑は避けられないが、犯人は銃乱射にそれを上回る見返りがあると考えている。だから犯行に及ぶ。それは認知障害と言えるだろう。

──DSM-Vの何が問題なのか?

DSM-Vは様々な人の症状を一般化したものだ。今回の銃乱射事件の容疑者のような極端な性格はほとんど反映されていない。彼は17人を殺害し、14人を負傷させた後に犯行現場を立ち去り、身柄を拘束されるまで周辺をぶらついた。

あまりに極端な行動だ。犯行を予測できる心理学体系は確立されていない。今後は個々の犯人を分析し、その結果をもとに明確な犯人像を把握し、彼らの共通点を見つける必要があるだろう。そうすれば、乱射事件の再発防止に役立つ新たな診断基準の策定につながるかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中