最新記事

中東

絶望のシリア和平は新たな戦いへと向かう

2018年2月5日(月)11時55分
ジョナサン・スパイヤー(ジャーナリスト)

シリア国境に近いトルコ南部ハタイに集結したトルコ軍部隊 Umit Bektas-REUTERS

<シリア内戦は最終局面を迎えているものの外国勢力の介入で未来は混沌としている>

アメリカはシリアの国土の約28%を半永久的に、クルド系のシリア民主軍と合同で実効支配し続けるつもりだという。情報の信頼性は複数の米政府当局者が認めている。

しかしシリア内戦に介入している他の勢力が、そんな計画を認めるわけがない。例えばアメリカの同盟国であるトルコ。先頃「オリーブの枝作戦」なるものを開始して、クルド系部隊の支配するシリア北部アフリンの攻略を目指している。一方で首都ダマスカスを拠点とする政府軍は南部でスンニ派系の反政府武装勢力に対する攻勢を強めているし、北部イドリブでも主要な空軍基地を奪還している。

テロ組織ISIS(自称イスラム国)の拠点崩壊で内戦の終結は近いという説もあるが、とんでもない。まだまだ流血は続いていて、アメリカがシリア領内に居座れる保証はどこにもない。

シリアの戦争に首を突っ込んでいる諸勢力の戦争続行能力を疑う声もあるが、こちらもとんでもないことだ。内戦の構図を複雑にし、長引かせてきた事情(アサド政権崩壊の可能性)は消滅しつつあるが、だからと言って国民に平和な未来が約束される気配はない。むしろ、古い戦争の腹が裂けて新たな戦争が生まれつつある。

実を言えば、14年の夏頃からシリアでは2つの戦争が並行して起きていた。1つ目の戦争は政府軍と反体制派の戦いで、主たる戦場は西部の人口密集地。第2の戦争はISISとアメリカ主導の有志連合との戦いで、主戦場は北東部だ。

どちらの戦争も終わりに近づいている。まず15年9月30日にロシア軍が参戦した時点で、最初の戦争はアサドに有利な形でほぼ決着がついた。反体制派の対空戦闘能力は乏しく、ロシアの空爆とイラン系地上部隊の攻勢の前には無力だった。

だからアサド政権は間違いなく存続する。ただし7年前の強権的な独裁政権と同じではない。今後のバシャル・アサド大統領には何の決定権もなく、政権の存続を保証する諸勢力の言いなりになるしかないだろう。

最近のアフリンの情勢を見ればいい。アサドはトルコ軍の侵略に断固として反対すると表明し、「アフリンに対するトルコ軍の残虐な攻撃は、トルコ政府が最初からテロリズムとテロ組織を支援していたことの証拠にほかならない」と述べた。同国のファイサル・メクダド副外相も、「シリア領空でトルコ軍機を撃墜する準備はできている」と豪語している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、FRB次期議長の承認に自信 民主党の支

ワールド

エプスタイン文書追加公開、ラトニック・ウォーシュ両

ワールド

再送-米ミネソタ州での移民取り締まり、停止申し立て

ワールド

移民取り締まり抗議デモ、米連邦政府は原則不介入へ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 3
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタリア建築家が生んだ次世代モビリティ「ソラリス」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    中国がちらつかせる「琉球カード」の真意
  • 6
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    【銘柄】「大戸屋」「木曽路」も株価が上がる...外食…
  • 10
    「着てない妻」をSNSに...ベッカム長男の豪遊投稿に…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中