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米経済

政治も経済も......世界は「中心」なき時代へ

2018年2月1日(木)16時30分
ローレンス・サマーズ(元米財務長官)

国際秩序の安定を守るために

政府が生活をよりよくするという信頼を国民が失ったとき、政府は政府にしか解決できない脅威をひたすら喧伝して、国民の支持を得ようとする。今の世界に怒りや将来への不安、マイノリティーをやり玉に挙げる誘惑が広がっているのも、政府が外国の脅威を強調したがるのもそのせいだ。

こうした現象は世界中で起きている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領、中国の習近平(シー・チーピン)国家主席はいずれもナショナリズムを統治戦略の中核に据える。トランプもまた国際社会という概念を退け、国民国家間の終わりなき主導権争いという世界観を選択している。

戦後70年以上、国際社会という概念を掲げてきた超大国アメリカが場当たり的な「ディール(取引)」を重視するなら、他国も同じやり方をするしかない。もはや安全保障でアメリカに頼れない国々は、自分の身は自分で守らなければとの圧力を感じている。当然ながら、アメリカに敵対する国はその間隙を突こうとするだろう。

税制や規制、予算政策の変更点は次期政権によってまた変えることができる。だが、アメリカは同盟国を守る気がないという認識を拭い去るのはずっと難しい。一度破られた約束は再び破られる可能性があると疑われるし、アメリカ離れを選択した国は再度の路線転換が不可能になるかもしれない。

果たして、中心は持ちこたえられるのか。国際秩序は今後も、大体において安定を保てるのか。答えは、トランプ政権の選択とそれに対する他国の反応次第だ。ただし、他国はアメリカ大統領の行動だけに注目するわけではない。その大統領の支持率が下がり続けているなら、なおさらだ。

だからこそ、米国民はこれまでに増して主張しなければならない。私たちはこれからも民主主義の擁護者となり、繁栄を追求し、国際社会でリーダーシップを発揮し続ける、と。

From Project Syndicate

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