最新記事

教育

博士を取っても大学教員になれない「無職博士」の大量生産

2018年1月25日(木)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

しかし、こうした強硬策を待たずとも、博士課程入学者は2003年をピークに減少の傾向にある。博士課程を出ても行き場がないことが知れ渡ってきたためだろう。それは、<表1>のデータからもうかがえる。

maita180125-chart02.jpg

2003~17年にかけて博士課程入学者は2割減ったが、就職が厳しい人文・社会系では4割も減じている。年齢別にみると、20代の若年層で減少幅が大きい。修士課程からのストレートの進学組が減っているのだろう。

その代わり、高齢層の入学者は増えている。60歳以上は1.7倍の増だ。退職し、余生の目標を博士号取得に定めたという高齢者も多いと思われる(「72歳、いざ博士号 岩国の工藤さん」(朝日新聞、2011年4月20日)。雇用の流動化に伴い、再学習への社会人の要請も高まるはずだ。これからの大学院は、こうした欲求に応える「生涯学習」のセンターとして機能することが望まれる。

学術研究を担う人材の育成はいつの時代でも不可欠で、大学院はその中心機関であり続けるだろう。ただ今後は、それだけを前面に出していては、己の存在意義を分かってもらえそうにない。事業の多角化、役割革新が必要だ。

【筆者注】<図1>の大学教員市場の開放係数は、竹内洋・京都大学名誉教授が考案した。

<資料:文科省『学校基本調査』

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国の世界融資、途上国でなく米国など富裕国に集中=

ビジネス

エヌビディア、強気見通しでAIバブル懸念は当面後退

ワールド

経済対策の国費21.3兆円で最終調整、事業規模は4

ビジネス

エヌビディア、強気見通しでAIバブル懸念は当面後退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 8
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中