最新記事

ロシア

ロシア軍「外交発言力」高まる プーチンが後押しする狙いは?

2018年1月2日(火)11時46分

シリアのアサド大統領と面会するロシアのショイグ国防相 REUTERS

ロシアのショイグ国防相は、ダマスカスからドーハに至る、思いもよらない場所にその姿を現している。プーチン大統領の下で軍の影響力が強まっている兆候と言えるだろう。

ここ数カ月、時に砂漠用の迷彩を施した軍服を身にまとったジョイグ国防相は、ダマスカスではシリア大統領と協議し、エルサレムではイスラエル首相に会い、ドーハではカタール首長の歓迎を受けた。

長く外務省の縄張りと思われていた分野に国防相が踏み込んでいることは、ロシア国内でも驚かれている。厳しい外交儀礼に基づけば、閣僚は直接のカウンターパートとのみ協議するのが普通だからだ。

ウクライナでは、2014年にロシア非正規部隊による掌握を経てクリミア半島を併合し、シリアではロシア軍の支援により戦況が変化し、アサド大統領側が優勢となっている。こうしたロシア政府が大きな成功とみなす状況から、軍は政治的な配当を受け取っている。

「トップレベルでの(軍の)影響力が増すことになった」とロシアのベテラン当局者は語る。国防省とも接触しているが、メディア向けに語る権限を持っていないとして、この当局者は匿名を希望した。

ロシア政府、国防省、外務省からのコメントは得られなかった。ただし国防省・外務省双方を知る関係筋3人は、こうした傾向が見られることを認めている。

軍の影響力増大に伴い、ロシア外交官の一部は不満を示しており、また西側当局者のあいだでも、ロシアの外交政策に強硬な側面が生じているという懸念を呼んでいる。

外交政策決定が以前より敵対的かつ不透明になっていることから、ロシアが新たに大胆な軍事行動を起こす可能性が高まっている、と一部の西側当局者は警鐘を鳴らす。

「外交政策について、これまでより大きな発言権を国防省に与えると、トラブルの種を探すようになる」と、ある当局者は、問題の微妙さゆえに匿名を条件としてと語った。

ショイグ国防相の派手な活動により、3月の選挙で4期目をめざすプーチン大統領が突然辞任せざるを得なくなり、6年間の任期を務めることができない場合、長年忠実な部下であったショイグ氏が代理を務めることになるのではないかとの噂が再燃している。

62歳のショイグ氏は政党政治には関与していないが、世論調査では、大統領候補の人気ランキングでトップ5に入ることが多い。信頼度ではプーチン大統領に次ぐ2位につけることも多く、この夏にはプーチン氏と旅行先で釣りを楽しむ様子が撮影されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:屋台販売で稼ぐ中国の高級ホテル、デフレ下

ワールド

メラニア夫人、プーチン氏に書簡 子ども連れ去りに言

ワールド

米ロ首脳、ウクライナ安全保証を協議と伊首相 NAT

ワールド

ウクライナ支援とロシアへの圧力継続、欧州首脳が共同
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 4
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 5
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「デカすぎる」「手のひらの半分以上...」新居で妊婦…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中