最新記事

アメリカ外交

トランプ、エルサレムをイスラエル首都と認定 中東情勢悪化の恐れ

2017年12月7日(木)08時30分

12月6日、トランプ米大統領は、エルサレムをイスラエルの首都と認めると正式に発表した。写真はホワイトハウスで同日撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

トランプ米大統領は6日、エルサレムをイスラエルの首都と認めると正式に発表した。

トランプ大統領はホワイトハウスで行った演説で、和平プロセスの進展に向け「長らく遅延」していた決定を行ったとし、「エルサレムをイスラエルの首都と公式に認定する時期が来たと判断した。これまでの大統領はこの件を主要な選挙公約に掲げてきたが、実行しなかった。私は今、実行に移している」と述べた。

これに伴い、トランプ政権は現在テルアビブにある米国大使館をエルサレムに移転する作業を開始する。移転には何年もかかるとみられている。

エルサレムにはイスラム教、ユダヤ教、キリスト教の聖地があり、その位置付けはイスラエル・パレスチナ間の和平合意の焦点の1つとなっている。

国際社会はイスラエルによる統治を認めておらず、エルサレムの位置付けに関しては交渉によって解決されるべきとしている。

今回のトランプ氏の決定はイスラエルとパレスチナとの紛争において橋渡し役を担ってきた米国の役割を脅かし、米政府がイランやスンニ派のイスラム過激派に対抗するうえで頼ってきたアラブ同盟諸国との関係に亀裂を生じさせる。

イスラエルはエルサレムを「永遠の首都」とみなし、各国の大使館をエルサレムに移転するよう求めてきた。パレスチナは独立国家の首都が東エルサレムに置かれることを求めている。

イスラエルのネタニヤフ首相は「歴史的な日だ」としてトランプ氏の声明を歓迎。他国にもイスラエルにある大使館をエルサレムに移転するよう促した。

またパレスチナとの和平合意では、エルサレムをイスラエルの首都として認める必要があると述べた。

一方、パレスチナ自治政府のアッバス議長は6日、エルサレムについて「パレスチナ国家の永遠の首都」と言及。トランプ氏の決定は米国が平和的な仲介者としての役割を放棄したことと同じと述べた。

ローマ法王フランシスコは、新たな緊張が世界的な紛争を一段と刺激するとし、現状が維持されるよう呼びかけた。中国とロシアは中東情勢を悪化させる可能性があるとの懸念を表明した。

イスタンブールの米国領事館の前には数百万人が集まり、トランプ氏の決定に対し抗議した。

フランスのマクロン大統領はトランプ氏の決定について「遺憾」とし、同決定を支持しないとした。国連のグテレス事務総長はイスラエルとパレスチナの2国家共存に代わるものはないとした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 10
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中